志苔館

志苔館（しのりたて）

志苔館は、現在の北海道函館市に位置する中世の城館跡です。この地は、かつて道南十二館の一つとして知られ、その歴史は小林氏によって築かれたと伝えられています。現在、志苔館跡は、その歴史的価値から国の史跡として指定を受け、保護されています。

立地

志苔館は、自然の地形を巧みに利用して築かれました。西側には旧志苔川が流れ、東側は溪沢へと続いています。南方は海に面した丘陵上に位置し、天然の要害となっています。

城主

志苔館の城主は、小林氏です。その系譜は以下の通りです。

初代：小林太郎左衛門尉良景 - 先祖は万里小路藤房に仕え、祖父の小林次郎重弘の時に蝦夷島(北海道)に渡ったとされています。
二代：小林弥太郎良定
三代：小林三郎右衛門良治

遺跡概要

1983年から1985年にかけて、函館市教育委員会による発掘調査が実施されました。この調査によって、志苔館の構造や歴史がより詳細に明らかになりました。

館跡は、自然地形を活かし、四方を土塁と薬研状または箱薬研状の空堀で囲み、全体としてほぼ長方形の形状をしています。内部は東西約70-80メートル、南北約50-65メートルで、その広さは約4,100平方メートルに及びます。曲輪の内部からは、掘立柱建物跡や井戸が確認されており、当時の生活の様子を垣間見ることができます。土塁の高さは、北側で約4.0-4.5メートル、南側で約1.0-1.5メートルと場所によって異なり、防御の工夫が見られます。土塁の外側、特に北側と西側には、幅約5-10メートルの空堀が設けられ、最も深い所では約3.5メートルの深さがあります。

発掘調査では、15世紀前半ごろを中心とする青磁、白磁、珠洲焼、越前焼、古瀬戸などの陶磁器が出土しました。これらの遺物の年代は、『新羅之記録』に記された長禄元年のコシャマインの戦いにおける志苔館陥落の時期（1457年）と矛盾しないことから、当時の状況を裏付ける重要な資料となっています。

2017年4月6日には、志苔館は続日本100名城（101番）に選定され、その歴史的価値が改めて評価されました。

史跡指定

志苔館は、1934年8月9日に国の史跡として指定されました。その後、1977年4月27日には、腰曲輪、濠、溪沢全体に指定地が及ぶように追加指定が行われ、保護範囲が拡大されました。

中国銭の大量出土

1968年には、志苔館の南西方向100メートルの地点から、埋納されたと推定される越前焼、珠洲焼の大甕3個の中から、計38万7,514枚にも及ぶ中国の銅銭が出土しました。これは、日本国内で1か所から発見された古銭としては最大級の量であり、「北海道志海苔中世遺構出土銭」として国の重要文化財（考古資料）に指定され、現在は市立函館博物館に所蔵されています。

年表

1457年（長禄元年）：コシャマインの戦いにて陥落
1934年（昭和9年）8月9日：国の史跡に指定
1968年（昭和43年）：中国銭が大量に出土
1977年（昭和52年）4月27日：国の史跡の範囲拡大
1983年から1985年：函館市教育委員会によって発掘調査
2017年（平成29年）4月6日：続日本100名城（101番）に選定

支館

志苔館には、2つの支館があったとされています。これらの支館は、砦または狼煙場として、函館西部地区の箱館（宇須岸館）を監視する役割を担っていたと推定されています。

与倉前館：根崎町の根崎保育園付近に位置し、塁跡遺構があったとされています。
* 弥右衛門川館：高松町に位置し、痕跡はありません。東西16m、南北15mの規模であったとされています。

所在地

函館市志海苔町・赤坂町

交通手段

函館バス下海岸線（91・91A・91C系統）「志海苔」停留所下車、徒歩約5分。
「湯倉神社前」停留所までは、函館市電湯の川線（湯の川停留場乗継）も利用可能です。

志苔館は、その歴史的背景と貴重な遺構を通じて、北海道の歴史を今に伝える重要な史跡です。

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