志賀理江子

志賀理江子：被災地と共にある写真家

志賀理江子（しが りえこ）は、1980年愛知県岡崎市生まれの現代日本を代表する写真家です。若くして海外に飛び出し、ロンドンの芸術大学で研鑽を積みました。その高い芸術性と社会への鋭い視点は、数々の賞を受賞することに繋がっています。2008年には、ロンドンの公営団地の人々や、オーストラリア、仙台での滞在制作を基にした作品で第33回木村伊兵衛写真賞を受賞。同年に発表された写真集『Lilly』と『CANARY』は高い評価を得ました。翌2009年には、川内倫子氏と共にニューヨーク国際写真センターインフィニティアワード新人賞を受賞するなど、国際的な舞台でもその才能を認められました。

彼女の作品は、単なる記録写真にとどまりません。被写体と深く関わり、その内面を映し出すような、人間味あふれる写真が特徴です。2008年秋、志賀氏は「松林と海の美しさに一目惚れ」して宮城県名取市の北釜地区に移住。地域に溶け込み、地域カメラマンとして祭りや運動会などを撮影する傍ら、住民のオーラルヒストリーの作成を開始しました。この活動は、単なる記録にとどまらず、地域住民との強い絆を育む基盤となりました。

しかし、2011年3月、東日本大震災が名取市を襲います。志賀氏も被災者の一人となりました。この経験は、彼女の創作活動に大きな影響を与えました。震災後の被災地の風景、人々の苦しみ、そして希望を映し出した作品は、多くの人の心に響き、社会問題への関心を高める契機となりました。

震災後も、志賀氏は被災地で活動を続けました。2012年にはせんだいメディアテークで個展「螺旋海岸」を開催し、第28回東川賞新人賞、宮城県芸術選奨新人賞を受賞。その後も国内外で個展を開催し、高い評価を得ています。2013年には、あいちトリエンナーレにも出展。さらに、アムステルダムのFoam写真美術館でも個展を開催するなど、国際的な活動も精力的に行っています。2014年には第24回タカシマヤ美術賞を受賞、2019年には第35回東川賞国内作家賞を受賞するなど、その活動は高く評価されています。同年、東京都写真美術館では個展「ヒューマン・スプリング」を開催。多岐にわたる活動は、現代社会における写真の可能性を追求し続けていることを示しています。

主な作品集には、『Lilly』『CANARY』『螺旋海岸 notebook』『螺旋海岸 album』『Blind Date』『志賀理江子 ブラインドデート 展覧会』『ヒューマン・スプリング』などがあります。これらの作品は、彼女の活動の軌跡、そして写真家としての揺るぎない姿勢を示すものです。

志賀理江子氏は、単なる写真家ではなく、地域社会に深く根ざした活動家でもあります。被災地と寄り添い、その姿を写真を通して世界に発信し続ける彼女は、現代日本を代表する写真家として、これからも多くの人々に感動と勇気を与え続けることでしょう。彼女の今後の活動からも目が離せません。

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