応急手当指導員

応急手当指導員とは

応急手当指導員は、日本国内において、消防機関が実施する救命講習で指導を行うための公的資格です。この資格を持つ者は、上級救命講習、各種普通救命講習、救命入門コースなどの指導を担当することができます。また、応急手当普及員を育成するための講習を担当することもあります。資格は、各消防本部の消防長によって認定され、総務省消防庁の「応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱」に基づいて運営されています。

概要

応急手当指導員は、主に医師、消防吏員（救急隊員や救急救命士）、消防団員などが取得する資格ですが、一部の自治体では一般市民にも取得の機会が提供されています。また、北九州市や沼津市のように、嘱託職員として有償で応急手当指導員を雇用している地域も存在します。

資格を取得すると、講習の修了者に証明書を交付する際に自身の署名と捺印を行うことが許可されます。さらに、講習実施機関によっては、受講者に救命講習受講記念バッジを配布することもあります。バッジの色は、普通救命講習（緑）、上級救命講習（紫）、応急手当普及員（オレンジ）と区別されています。

資格取得

一般市民が応急手当指導員の資格を取得することは、現状では比較的難しいとされています。これは、資格取得に一定の要件が定められているためです。しかし、消防機関に所属する者や医療従事者だけでなく、消防団員や一般市民も、まず応急手当普及員の資格を取得し、その後のステップとして指導員の資格を目指すことができます。

応急手当指導員になるためには、消防機関が実施する24時間の応急手当指導員講習IIを全課程修了し、筆記試験と指導実技の試験に合格する必要があります。さらに、インストラクターとしての適性も評価され、これらの条件を満たした上で各機関の消防長から認定を受けることができます。資格の有効期間は3年間です。指導員として不適切な行為があった場合は、消防長によって資格が取り消されることもあります。

救急救命士、救急隊員、または救急隊員資格を持つ消防吏員は、8時間の応急手当指導員講習Iを受講することで資格を得られます。ただし、年間30時間以上の講習指導実績がある場合は講習が免除されます。また、応急手当普及員は、16時間の応急手当指導員講習IIIを受講することで資格を得ることができます。

ただし、普及員の中には、認定後に実際の講習指導経験が少ないため、知識や指導スキルが不足している者もいます。そのため、一部の消防機関では、普及員が指導員講習を受講する前に、普通救命講習などで講師や講師補助としての指導経験を一定時間以上積むことを義務付けています。

他の地域で応急手当指導員の認定を受けている場合でも、講習内容が総務省消防庁の実施要綱に基づいている限り、原則として他の消防本部でも認定が有効となります。ただし、消防本部によっては、別途講習を受講する必要がある場合や、認定が認められない場合もあります。

資格の更新

応急手当指導員の資格は、3年ごとに4時間の応急手当指導員再講習を受講することで、さらに3年間有効となります。再講習では、主に指導要領の実技と修正が行われます。再講習を修了しない場合や、技量や適性が不十分と判断された場合は、消防長による再認定を受けられず、資格が失効します。この資格は、講習を修了するだけでなく、継続的な更新と再認定が必要である点が特徴です。

東京消防庁や横浜市消防局では、職員や消防団員に与えられた応急手当指導員資格について、在職（在団中）を資格有効期間としており、退職（退団）後も3年間は有効としています。再講習を受講した場合は、再講習日から3年間有効となります。

類似の民間資格

応急手当指導員に類似する民間団体による救急法指導員資格には、以下のようなものがあります。

日本赤十字社の「赤十字救急法指導員」
[アメリカ心臓協会]の「BLSインストラクター」
メディック・ファーストエイド(MFA)の「ベーシックプラス」「チャイルドケアプラス」

これらの資格は、消防本部が実施する救命講習での指導や修了証の交付を行うことはできません。

外部リンク

[総務省]]消防庁「[応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱 (PDF)」（最終改訂 令和4年3月31日）

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