応急手当普及員

応急手当普及員とは

応急手当普及員は、消防機関が認定する応急処置の普及を支援する資格です。この資格を持つ者は、救命講習で応急処置の方法を指導し、市民の救命率向上に貢献します。消防機関の消防長によって認定される公的資格であり、救命講習の普及において重要な役割を担います。

資格の背景

救命講習は通常、医師や救急隊員が指導しますが、消防職員は消防や救急活動が主な業務であるため、十分な時間と回数を救命講習に割くことが難しい状況です。救急車の現場到着時間の長期化に伴い、心肺停止の場合には救急隊到着までの適切な応急処置が不可欠であり、救命手当の普及は喫緊の課題となっています。このような背景から、一般市民へ救命法を指導する専門家として応急手当普及員が設置されました。

資格の取得と更新

応急手当普及員になるには、消防機関が主催する24時間の応急手当普及員講習Iを受講する必要があります。この講習では、基礎医学や指導技法などの座学と、指導要領や模擬講習などの実技を行います。講習の最後に筆記と指導実技の効果測定があり、合格することで消防長から認定されます。救急救命士や救急隊員、救急隊員資格を持つ消防吏員は、4時間の応急手当普及員講習IIの受講で資格を得ることができます。

応急手当普及員講習は、原則として居住地または在勤・在学地の消防本部で受講できますが、近隣の消防本部で受講できる場合もあります。ただし、一部の消防本部では地元住民に限定しているため、注意が必要です。認定を受けると認定証が交付され、有効期限は3年間です。資格を更新するには、再講習を受講する必要があります。再講習では、最新の救命ガイドラインに基づいた知識や技術を習得します。再講習を修了し、認定されない場合は資格が失効します。

消防団員としての活動

消防団員が応急手当普及員の資格を取得した場合、証明書とともに徽章が交付されます。これは、消防団員が地域社会における救命活動のリーダーとして活躍することを期待するものです。

普及員の役割

応急手当普及員は、消防長から委嘱を受けることで、普通救命講習の講師として活動できます。主な対象は、事業所の従業員や自治会、自主防災組織の構成員です。講習では、心肺蘇生法やAEDの使用方法、その他の応急処置について指導を行います。講師として活動できる範囲は、基本的に認定を受けた消防本部の管轄内です。ただし、管轄外で講師を務める場合は、事前に当該地域の消防本部に確認が必要です。

応急手当普及員が指導する救命講習を受講した場合も、消防本部が発行する修了証と同等のものが交付されます。これにより、受講者は応急処置の知識や技能を習得した証明となります。また、受講者には、救命講習受講記念バッジが販売されている地域もあります。

類似の資格

応急手当普及員に類似する資格として、民間団体が認定する救急法指導員の資格があります。これらの資格は、応急処置の普及に貢献するものの、消防本部が主催する救命講習での指導や修了証の交付はできません。

日本赤十字社の「赤十字救急法指導員」
アメリカ心臓協会（AHA）の「ハートセイバー・インストラクター」
* メディック・ファーストエイド（MFA）の「ベーシックプラス」

上位資格

応急手当普及員の上位資格として、全ての種類の救命講習を指導できる応急手当指導員があります。応急手当指導員は、より高度な知識と指導技能を持ち、救命講習の指導者育成にも携わります。

まとめ

応急手当普及員は、救命講習の普及を通じて地域社会の安全を守る上で非常に重要な役割を担っています。資格取得には一定の研修が必要ですが、その知識と技能は、いざという時に多くの命を救う力となります。応急手当普及員として活動することは、地域社会への貢献と、自身の成長につながる貴重な経験となるでしょう。

応急手当講習会のご案内 - 公益財団法人 東京防災救急協会

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