持仏堂

持仏堂（じぶつどう）とは

持仏堂とは、日常的に礼拝する仏像（念持仏）や位牌を安置するための堂、つまり建物や部屋のことを指します。念誦堂（ねんずどう）とも呼ばれ、僧侶のみが礼拝する場合には内持仏堂と区別されることもあります。一般の家庭においては、仏像や位牌を安置する仏間や仏壇が、持仏堂と呼ばれることもあります。

持仏堂の歴史

持仏堂の起源については、様々な説があります。江戸時代の僧侶である子登が著した『真俗仏事編』では、唐の義浄の『南海寄帰内法伝』にある「僧房内に尊像を安置するは南海諸州一般に行うこと」という記述が、その起源であると論じられています。

日本においては、『日本書紀』の天武天皇十四年条にある「諸国毎家作仏舎、乃置仏像及経巻、以礼拝供養」という詔が、持仏堂の始まりであるとするのが一般的です。奈良時代には、念持仏は厨子や龕（がん）に納められることが多かったのですが、平安時代以降になると、屋内の専用の部屋に置かれるようになり、次第に独立した建物や別室として持仏堂が設けられるようになりました。貴族の間では、邸内に持仏堂を建てるのが一般的になりました。

鎌倉時代には、源頼朝が持仏堂で法華経の購読を行ったという記録が『吾妻鏡』に残っています。持仏堂は、信仰する仏像を守り本尊として安置し、自身や一門の安寧を祈願する場として、また禅定の場として使われました。しかし、『徒然草』第七十二段では、仏像の多い持仏堂が「賤しげなるもの」として挙げられています。これは、持仏堂の存在が、必ずしも常に肯定的に捉えられていたわけではないことを示しています。

近世に入ると、維摩居士の方七尺の居宅の故事に倣い、茶室を兼ねて建てられる持仏堂も現れました。江戸時代中期以降に一般化した在家の仏間や仏壇は、持仏堂が変化したものであると考えられています。

持仏堂の例

持仏堂として著名な例としては、以下のものが挙げられます。

興福寺: 藤原鎌足が病気快癒を願って維摩詰像を作り、家中に堂を建てたのが始まりであり、持仏堂から発展した寺院と見なすこともできます。
平等院: 『長秋記』には、本堂のほかに持仏堂があったことが記されています。
阿閦寺: 石上宅嗣が邸宅を寺院としたものですが、厳密には阿閦如来像を安置した持仏堂であると言えます。
安楽行院: 藤原基頼の持仏堂である持明院が基になったとされています。
* 慈照寺（銀閣寺）: 東求堂は、足利義政の持仏堂です。

まとめ

持仏堂は、個人の信仰と深く結びついた空間であり、時代や身分によってその形態を変えながら、人々の心の拠り所となってきました。寺院の起源の一つになったり、仏間や仏壇へと変化したりと、その歴史は仏教の信仰とともに歩んできたと言えるでしょう。

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