怒 (ゲーム)

怒 -IKARI-：SNKが生んだ伝説のシューティングゲーム

1986年、SNKはアーケードゲーム市場に革命を起こす作品を発表しました――それが『怒』（海外名：IKARI WARRIORS）です。縦スクロールシューティングというジャンルにおいて、本作は独自のゲーム性と高い難易度で多くのプレイヤーを魅了し、SNKの名を世界に知らしめる一作となりました。

革新的な操作性：ループレバー

『怒』最大の特徴は、8方向のループレバーです。これは、スティック上部にダイヤルがついた特殊なレバーで、倒すことで自機の移動、回転させることで攻撃方向の調整を行います。12方向の精密な操作性と、手首への負担を軽減する設計は、当時としては画期的でした。2つのボタンは、銃と手榴弾の発射に使用します。

迫り来る敵と限られた資源

プレイヤーは、次々と現れる個性豊かな敵兵を倒しながらステージを進みます。敵兵を倒すと、銃弾や手榴弾の補給となるアイテムが出現することがあります。弾数制限があるため、アイテム回収は生存に不可欠です。

さらに、味方である空戦車に乗り込むことも可能です。戦車は強力な武器ですが、ガソリンメーターがゼロになると爆発してしまいます。そのため、戦車を使用する際にもアイテム回収は重要になります。エリア間のゲートは、手榴弾か戦車砲で破壊する必要があります。

独特のゲームシステム

『怒』は、従来のゲームにはない特徴的なシステムも備えています。例えば、敵の弾だけでなく、味方の弾や自分の弾にも当たるとミスになります。また、敵はプレイヤーの攻撃を回避するなど、高度なAIを搭載しています。これらの要素が、ゲームに高い難易度と戦略性を生み出しています。

ストーリー：復讐の炎と裏切りの影

『怒』のストーリーは、退役後傭兵となったラルフ・ジョーンズの初任務から始まります。特殊部隊を率いて敵基地に潜入する任務でしたが、裏切り者の存在によって部隊は壊滅してしまいます。生き残ったラルフは、裏切り者クラーク少尉と共に、復讐の道を歩むことになります。

一方、『IKARI WARRIORS』では、CIFのアレクサンダー・ボン大将が革命軍に捕らえられたことから物語が始まります。ボン大将の救出のため、ポールとビンスはジャングルに墜落した飛行機から脱出し、革命軍司令部を目指します。

多彩なキャラクター

ラルフ・ジョーンズは、赤いバンダナを巻いた1P専用キャラクターです。クラーク・スティルは、青いバンダナを巻いた2P専用キャラクターで、ラルフとは対照的な存在です。その他にも、カワサキ大将やクック大佐など、個性的なキャラクターが登場します。

多様な移植版と進化

『怒』は、ファミリーコンピュータ、MSX2など様々なプラットフォームに移植されました。移植版では、ステージ構成やアイテム、登場キャラクターなどが変更されるなど、アーケード版とは異なる魅力を持つ作品となっています。特にファミリーコンピュータ版は、漫画家のたがみよしひさ氏によるパッケージイラストも話題となりました。

開発秘話：ランボーから生まれた傑作

当初、『怒』は映画『ランボー』をモチーフに開発されていました。版権交渉も進んでいたものの、アーケード展示会での予想以上の反響により、版権取得は不要となりました。2人同時プレイの実装は、新風営法による深夜営業規制を考慮したものです。また、ゲームセンターの騒音環境を再現したサウンドも特徴的です。

クラウムズ：進化するAI

『怒』には「クラウムズ」と呼ばれる擬似人工知能が搭載されています。これは、プレイヤーのプレイ状況を監視し、敵の配置やアイテムの出現率などを調整します。プレイヤーの腕前によってゲームの難易度が変化する、先進的なシステムでした。

そして伝説へ

『怒』は、SNKの名を世界に広め、多くのプレイヤーに愛される作品となりました。しかし、その高い難易度と、ループレバーという独特の操作性ゆえに、ゲームセンターではレバーの故障に悩まされるケースもあったようです。それでもなお、『怒』は、アーケードゲームの歴史に燦然と輝く名作として、今なお語り継がれています。

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