思恩府

思恩府（しおんふ）とは

思恩府は、中国にかつて存在した行政区画の一つで、明代から民国初期にかけて、現在の広西チワン族自治区南寧市北部に位置していました。この地域は、その歴史を通じて行政機構の変遷を経験しており、思恩府はその重要な一時期を担っていました。

思恩府の成立と変遷

思恩府の歴史は、1439年（明の正統4年）に思恩州が府に昇格したことから始まります。この昇格は、地域の重要性の増大を反映したものでした。しかし、府への昇格からわずか2年後の1441年（正統6年）には、思恩府は思恩軍民府へと改編されました。この改編は、軍事的な要素が行政に組み込まれたことを意味し、地域の統治体制に変化があったことを示唆しています。

思恩軍民府は広西省に属し、奉議州と上映州、そして上林と武縁の2県を管轄していました。この行政区画の構成からも、思恩府が周辺地域を統括する中心的な役割を担っていたことがわかります。この地域では、岑氏が土司として知府を世襲しており、地域社会における有力者の影響力が大きかったことが伺えます。

清代に入ると、順治初年に思恩軍民府は再び思恩府へと名称が戻されました。この再編により、軍事色が薄れ、より行政的な機能が重視されるようになりました。清代の思恩府は、広西省に属し、武縁・上林・遷江の3県と賓州、那馬庁、そして白山土司、興隆土司、定羅土司、旧城土司、都陽土司、古零土司、安定土司の7つの土司を管轄していました。この管轄範囲からも、思恩府が広範囲に及ぶ地域を統治していたことがわかります。

思恩府の廃止

思恩府の歴史は、1913年、中華民国によって廃止されたことで幕を閉じます。これは、中国における行政区画の再編の一環であり、思恩府の長い歴史に終止符が打たれました。思恩府は、その存在を通じて、地域の歴史と社会構造に深く関わってきました。その名称は消えましたが、その歴史は今もなお語り継がれています。

思恩府の変遷は、明代から民国にかけての中国の地方行政の変化を反映するものであり、地方統治における軍事と行政の役割の変遷や、土司制度の影響を理解する上で重要な事例と言えるでしょう。

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