思案橋事件

思案橋事件（しあんばしじけん）

思案橋事件は、1876年10月に東京の思案橋（現在の東京都中央区日本橋小網町）で発生した士族反乱未遂の重要な出来事です。この事件は、維新政府に対して反発する勢力の動きを象徴するものであり、当時の社会情勢を反映しています。

背景

事件は、同年に山口県で起こった萩の乱と連動して発生しました。萩の乱は、旧藩士の不満と政府への反感から勃発したもので、思案橋事件もこの流れを受けてのものでした。10月28日、萩の乱の報が永岡久茂を含む旧会津藩士に伝わると、彼らは東京を出発し、千葉への進軍を計画しました。

事件の経過

1876年10月29日、永岡と共に15名ほどの旧会津藩士は東京・思案橋から出航しようとしましたが、周囲の不審により警官が駆け付けました。突然の切り合いが発生し、その結果、永岡ら数名がその場で逮捕されます。逃走を試みた者もいましたが、最終的には中根米七を除いて全員が逮捕されました。

事件の主犯であった永岡は逮捕後に負傷しており、そのため翌年の1月に獄中で死亡します。それに伴う裁判では、井口慎次郎、中原成業、竹村俊秀の3名が斬罪となりました。一方、逃げ延びた中根は1878年に喜多方町の寺院で切腹しました。この事件において、警察側でも寺本義久警部補と河合好直巡査の2名が殉職しました。

計画と目的

思案橋事件では、千葉県庁を襲撃し、県令を暗殺した後に、東京鎮台歩兵第2連隊を説得して会津への進軍を企てる計画がありました。これは、萩の乱に呼応する形で士族たちが暴力的な手段に出たことを示しています。しかし、彼らの計画は早期の逮捕により頓挫しました。

関係者の墓所

事件に関わった関係者の墓所は、現在も存在しています。東京都新宿区の市谷源慶寺には、井口慎次郎ら処刑された3人が埋葬されています。また、永岡久茂の墓は今戸称福寺にありましたが、関東大震災や戦争によって失われてしまいました。他にも、染井霊園には警部補の寺本の墓が存在しています。

参考文献

この事件については、以下の資料が参考になります。

• - 東京日日新聞 『思案橋の暴徒事件』
• - 尾佐竹猛 『法窓秘聞』
• - 中村彰彦 『明治無頼伝』
• - 綱淵謙錠 『苔』

関連項目

思案橋事件は、当時の士族たちが抱えていた不満や政権への反抗を象徴する事件であり、他の士族反乱や反政府運動とともに、日本の歴史の中で位置付けられています。事件は、後に続く日本の近代化における重要な教訓とされ、歴史的意義を持っています。政府に対する直面した問題や、士族たちの心情を理解する手がかりとして、思案橋事件は今日でも語り継がれています。

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