思考場療法

思考場療法（Thought Field Therapy, TFT）とは

思考場療法（TFT）は、アメリカの心理学者ロジャー・キャラハンによって開発された心理療法の一種です。特定の身体部位をタッピングすることで、精神的、身体的な不調を改善するとされています。しかし、その有効性については科学的な根拠が乏しく、疑似科学であるという批判も存在します。

TFTの理論

TFTの理論は、中国医学の経絡の概念や、アプライドキネシオロジー、物理学など、様々な情報源から影響を受けています。TFTの支持者は、体全体に生命エネルギーが流れており、特定の思考や感情がその流れを阻害すると考えます。そして、上半身や腕の経穴を指でタッピングすることで、気の流れを調整し、心身の不調を改善すると主張します。

キャラハンは、水恐怖症の患者に対して、胃の経絡の最初の経穴である目の下を叩くように指示したところ症状が改善した経験から、TFTを考案しました。彼は、人が感情的な問題を抱えている時、特定の「思考場」に意識が集中すると考えました。この思考場の歪みが、感情的な混乱の原因である「パータベーション（精神的動揺の原因）」を引き起こすとされています。

TFTでは、感情的な混乱の原因を出来事そのものではなく、このパータベーションに求めます。そして、各パータベーションは特定の経穴に対応しており、その経穴を正確な順序でタッピングすることで、気の流れが改善し、感情的な混乱が解消されると主張します。

TFTの効果と主張

キャラハンは、TFTが心的外傷後ストレス障害（PTSD）、うつ病、不安、依存症、恐怖症といった幅広い心理的問題を改善するだけでなく、心房細動などの身体的問題にも効果があると主張しています。また、恐怖症であれば、最短5分で治療できるとも述べています。

さらに、キャラハンは、ボイステクノロジー（VT）という手法を用いることで、電話越しにもTFTが可能であると主張しています。VTに関する講習も実施しており、高額な受講料を設定しています。

TFTの普及と現状

TFTは、アダルトチルドレンなど、生きづらさを感じている人々を対象としたワークショップでよく用いられています。

TFTの有効性に対する評価と批判

TFTの有効性については、多くの議論があります。支持者は、TFTを支持する証拠として、肯定的なレビューを引用していますが、その多くは査読されていない事例報告に基づいています。

一方で、TFTを批判する人々は、その理論的根拠が乏しく、厳格な研究デザインに基づいた証拠が少ないと指摘しています。また、TFTの効果はプラセボ効果である可能性も指摘されています。

アメリカ心理学会は、2006年にTFTは「科学的根拠を欠く」と発表しました。また、アメリカ薬物乱用・精神衛生管理庁（SAMHSA）は、2016年にTFTを根拠に基づく治療として一時的に公開しましたが、プログラムの欠陥により2018年に停止し、現在はこのプログラムの使用を推奨していません。

査読付きの学術雑誌に掲載された研究では、TFTとランダムな順序でのタッピングに差がないことが示されており、キャラハンが主張する正確な順序でのタッピングの重要性を否定する結果となっています。

心理学の専門家からは、TFTは疑似科学の特徴を示すという批判や、効果のない疑似科学的治療法が政府機関や社会全体で採用されることへの懸念が表明されています。

まとめ

思考場療法（TFT）は、非主流の心理療法であり、その有効性については科学的な根拠が確立されていません。TFTに関心を持つ場合は、その利点と限界を理解した上で、慎重に検討することが重要です。

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