急がば廻れ

曲名：急がば廻れ（いそがばまわれ、Walk, Don't Run）

『急がば廻れ』は、1955年にアメリカのジャズ・ギタリスト、ジョニー・スミスによって作曲されたインストゥルメンタル曲です。この曲は、1928年にシグマンド・ロンバーグが作曲した「朝日のごとくさわやかに」と呼ばれる古いスタンダード・ナンバーの対旋律を用いて構成されています。初演から数年を経て、特に注目を集めたのは1960年に活動を開始したインストゥルメンタル・ロックバンド、ザ・ベンチャーズのカバーによるものでした。

ザ・ベンチャーズは、「急がば廻れ」をサーフ・アレンジで再構築し、シングル盤としてリリースすると瞬く間にヒット作となりました。このバージョンは、イギリスのチャートでも高評価を得て、ジョン・バリーセブンによるカバーもあったものの、ベンチャーズの版はより高い評価を受け、さらに『ニュー・ミュージカル・エクスプレス』などの媒体でもトップ10入りを果たしました。

ザ・ベンチャーズのこのヒットは、サーフ・ミュージックの黎明期を象徴するものであり、1960年の夏にはBillboard Hot 100で最高2位、キャッシュボックスでは3位を記録しました。この成功により、日本でも同年10月にリリースされ、1965年に訪れるベンチャーズの人気ブームの端緒が開かれました。

興味深い点として、この曲のドラマーについての話があります。初代ドラマーであるジョージ・バビットは後に空軍大将となるものの、曲のリリース前にバンドを脱退していました。そのため、正式にはスキップ・ムーアがこの曲のドラマーとしてクレジットされています。彼はスタジオレコーディングの際に、25ドルとレコードの印税の4分の1のどちらかを選ぶことができたものの、25ドルを選択しました。

さらに、ザ・ベンチャーズは1964年に新たなバージョン「急がば廻れ'64」をレコーディングし、再び米国チャートのトップ10入りを達成しました。また、彼らはこの曲を何度も再レコーディングし、「ウォーク・ドント・ラン'68」や「ウォーク・ドント・ラン'77」、さらには「ウォーク・ドント・ラン2000」など多様なバージョンが存在します。

曲の魅力はザ・ベンチャーズだけに留まらず、チェット・アトキンスが1957年にこの曲を先行して録音しており、彼のバージョンも高い評価を受けました。また、ザ・シャドウズやスティーヴ・ハウ、ハーブ・アルパート＆ザ・ティファナ・ブラスなど多くのアーティストにより様々なカバーがなされ、現在に至るまで多くの音楽ファンに親しまれています。

特に注目すべきは、2003年にザ・ベンチャーズのギタリスト、ノーキー・エドワーズが、ライト・クラスト・ドウボーイズとの共演で新たにこの曲を録音したことです。このバージョンはジャズ風のアプローチが施され、リズムギターの代わりにキーボードが使用されている点が特徴的です。

また、2010年にはこの曲が米国のThe Weather Channelの番組『Local on the 8s』で使用されるなど、幅広い世代やコンテンツにも浸透しています。

主な録音履歴

• - 1955年: ジョニー・スミス
• - 1957年: チェット・アトキンス
• - 1960年: ザ・ベンチャーズ
• - 1960年: ジョン・バリーセブン
• - 1964年: スプートニクス
• - 1965年: ハーブ・アルパート＆ザ・ティファナ・ブラス
• - 1971年: レッドツェッペリン
• - 1972年: ピンク・フェアリーズ
• - 1977年: ザ・シャドウズ
• - 1981年: ペンギン・カフェ・オーケストラ
• - 1983年: 渡辺香津美
• - 1985年: ロイ・ブキャナン
• - 1993年: カリフォルニア・ギター・トリオ
• - 1994年: ジェフ・ベック
• - 1998年: スティーヴ・ハウ
• - 1999年: ジョニー・A
• - 2003年: ノーキー・エドワーズとライト・クラスト・ドウボーイズ

このように、「急がば廻れ」は音楽史において特に影響力のある曲となり、様々な形で演奏され続けています。

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