怨霊侍

『怨霊侍』（おんりょうじ）は、荻野真によって描かれた日本の漫画作品です。2004年から2005年にかけて『ビジネスジャンプ』（集英社）で連載され、全23話が単行本全3巻にまとめられました。本作は、陰陽道を背景としたオカルトアクションであり、特殊な武術を駆使して死霊を退治するエキスパート「怨霊侍」を主人公としています。

概要

本作は、荻野真の前作『おぼこ』の連載中に、『ビジネスジャンプ』の編集方針がバイオレンスやセックスを扱う作品中心へと転換したことがきっかけで生まれました。方針に合わなくなった『おぼこ』を一時休載し、新たに連載されたのが『怨霊侍』です。当時の編集部からの要望に応え、パンチラやアクションを中心としたコンセプトが採用され、作中に登場する女性キャラクターのデザインには、当時流行していたゴスロリの要素が取り入れられています。

荻野真自身が入院中にプレイしていたテレビゲーム『サイレントヒル』から大きな影響を受けており、主人公の武器であるハンマーは、同ゲームに登場する鉄パイプがモチーフとなっています。また、主人公が持つ特殊な目「双瞳」は、映画『ゼイリブ』に登場する、普段見えないものが見えるようになる眼鏡の設定が元になっています。男女2人1組で技を繰り出すというスタイルは、以前荻野が描いた『拳銃神』の終盤に登場する、男女2人1組の殺し屋という設定が前身となっています。

『ビジネスジャンプ』では、『孔雀王』や『拳銃神』のような派手な展開は避けられ、行う場合は1話完結の読み切りから始めるように指示されたため、本作も6本の読み切りを経て連載が開始されました。入院中に余命宣告を受けた荻野真は、死の恐怖を味わった経験から、単純に恐さを追求した作品を目指し、怨霊や呪いといった負の力をテーマに選びました。しかし、霊や怨み、祟りなどを扱うと物語が陰気で不気味になりやすいため、短編にするには読者の涙を誘う必要があり、物語の構成に苦労したと語っています。

主人公たちのスタイルを確立するまでに単行本1冊分、雑誌連載期間にして半年もの期間を要しました。さらに、話の展開を面白くするために、敢えてキャラクターの設定や物語の全体像を曖昧なまま連載を始めたことが、物語の破綻を招く原因となりました。そのため、単行本2巻の発行時には、『ビジネスジャンプ』の読者がわかりやすく辻褄の合う話を好むと考え、単行本化でほとんど校正を行わなかった従来作品『孔雀王』『夜叉鴉』に対し、校正作業に倍の手間を要することになりました。

読者と自分の妥協点を探った結果、主人公の背景と世界観を中心に描こうとしていた当初の構想から、舞台を1箇所に限定し、格闘漫画や学園漫画の要素を取り入れることにしました。こうして単行本第2巻以降の展開は、荻野真初のオカルト学園格闘漫画となりました。主人公が様々な場所で活躍する序盤に対し、第2巻以降の本編では舞台が主人公の通う学校にほぼ限定されており、「大学編」とも呼ばれています。

物語の方向性が定まったものの、『ビジネスジャンプ』誌上での掲載位置はほとんどが末尾であり、常に連載終了の危機が迫っていました。人気投票の結果も期待に反して良い数字を得られず、編集部からは内容の変更を求められることになりました。当時の『ビジネスジャンプ』では、出版界の不況を打開するために、セックスを扱う漫画を主体とする風潮があり、本作もセックス中心とするか、本来の構想を維持するかの選択を迫られました。荻野真は連載終了を覚悟で後者を選択しましたが、不人気作品の連載を軒並み終了させる「ジャンプ方式」と呼ばれる編集方針が適用され、連載は打ち切りとなりました。荻野真自身は本作を「人生初の打ち切り作品」と呼んでいます。また、連載中に荻野真の体調が悪化したことが編集部とのトラブルを引き起こしたこともあり、本作終了後、荻野真は『ビジネスジャンプ』から離れることになりました。

最終巻の後書きにおいて荻野真は、いずれ本作の続きを別作品として再開すると語っており、後の連載作品『孔雀王 曲神紀』の後書きにおいて、同作の登場人物である王仁丸六角が、本作の登場人物と同一人物であり、同作の展開こそが本作の再開であることが明かされています。

あらすじ

物語の舞台は現代の日本。かつて国家や貴人に仕え、悪霊と戦った「怨霊侍」の末裔である黒羽太一が、現代に蘇る悪霊たちに立ち向かう姿を描きます。彼は特殊な力を持つ「双瞳眼」を持ち、悪霊を滅ぼすために戦います。

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