恥知らずのパープルヘイズ -ジョジョの奇妙な冒険より-

『恥知らずのパープルヘイズ -ジョジョの奇妙な冒険より-』

概要

上遠野浩平による小説作品で、荒木飛呂彦の漫画『ジョジョの奇妙な冒険 Parte5 黄金の風』のその後を描いています。本作は、荒木飛呂彦の執筆30周年と『ジョジョの奇妙な冒険』連載25周年を記念した企画の一環として発表されました。ハードカバー版、新書版、文庫版、電子版が刊行されています。

ハードカバー版の表紙は、フーゴとパープルヘイズが銀色で描かれ、装丁にもこだわられています。新書版では、紫色を基調としたカバーで、パープルヘイズとフーゴが描かれています。

物語の主人公はパンナコッタ・フーゴ。原作では語られなかった彼の過去や内面が深く掘り下げられ、他の部との繋がりを感じさせる描写も盛り込まれています。物語のテーマは「一歩を踏み出すことができない者たちの物語」とされ、フーゴの葛藤と成長が描かれています。また、作中では「スタンド」という言葉を使わず、「能力」という言葉で表現しています。

物語の舞台はイタリア、特にシチリアが中心となっており、フーゴたちが訪れる場所は、原作では描かれなかった土地です。上遠野浩平は、あとがきで「地名は厳密な発音よりも日本語表記として収まりが良いものを優先した」と述べています。また、本作独自の解釈として「群体型スタンドの持ち主は精神に決定的な空洞を抱えている」というものがあり、物語の重要な要素となっています。

新書版以降の版には、書き下ろし短編『トリッシュ、花を手向ける』が収録されています。また、ハードカバー版発売後には、付録小冊子『VSJOJOマニアクス』がつけられ、登場人物紹介や試し読み、西尾維新との対談などが収録されました。上遠野浩平自身が原作のファンであり、その縁からノベライズが実現しました。彼の他の作品とは異なり、本作は同一の世界観には含まれていません。

あらすじ

物語は、パッショーネの抗争から半年後の2001年が舞台です。フーゴは組織のNo.3となったミスタから、組織への忠誠を証明するため、ディアボロの残党である麻薬チームの始末を命じられます。もし失敗すれば殺されるという状況で、フーゴはシーラE、ムーロロと共に麻薬チームを追跡します。麻薬チームのメンバーは、マッシモ、コカキ、ビットリオ、アンジェリカの4人。特にマッシモはフーゴの旧知の人物でした。

フーゴたちは、ヴィッラ・サン・ジョヴァンニで敵の刺客を退け、その後シチリア島へ移動します。コカキはタオルミーナでフーゴたちを迎え撃ちますが、フーゴの能力によって倒されます。残りの敵を追うため、フーゴたちはヘリでオルティージャ島に向かいますが、アンジェリカの能力によって墜落します。

生き残ったフーゴとシーラEは、アンジェリカの襲撃を受けますが、フーゴのウィルスによってアンジェリカは倒れます。ビットリオはシラクサのドゥオーモに隠された石仮面を回収しようとしますが、ムーロロに敗れます。マッシモはシーラEを倒し、拷問してフーゴを呼び出しますが、フーゴの最後の手段によってウイルスに感染し死亡します。この戦いを通してフーゴのスタンドは進化を遂げます。

任務を終えたフーゴは、ジョルノに呼び出され、今回の任務の真の目的を知らされます。ジョルノはフーゴの成長を促し、彼を組織の一員として認めます。

登場人物

原作からの登場人物

パンナコッタ・フーゴ: 本作の主人公。元ブチャラティチームの一員で、組織を裏切った過去を持つ。今回の任務を通して、精神的な成長を遂げ、スタンド能力も進化する。彼の過去や内面が深く掘り下げられている。
ジョルノ・ジョバァーナ: パッショーネのボス。ディアボロを倒し、組織を改革している。物語の終盤でフーゴに真の目的を告げる。
グイード・ミスタ: パッショーネの副長。フーゴに麻薬チームの始末を命じる。
ブローノ・ブチャラティ: 故人。回想シーンで登場。フーゴを組織にスカウトした過去が語られる。
ナランチャ・ギルガ: 故人。回想シーンで登場。フーゴとの関わりが語られる。
レオーネ・アバッキオ: 故人。回想シーンで登場。フーゴとコンビを組んでいた過去が語られる。
トリッシュ・ウナ: ディアボロの娘。物語には直接関わらないが、後日談が描かれている。
ジャン＝ピエール・ポルナレフ: ディアボロとの戦いで死亡したが、魂が生きている。
サーレー: パッショーネの組員。麻薬チームとの戦いで死亡する。
マリオ・ズッケェロ: パッショーネの組員。麻薬チームとの戦いで死亡する。
ディアボロ: パッショーネの創立者。ジョルノに敗れた後、消息不明。
ポルポ: 故人。回想シーンで登場。フーゴに捜査中止を命令した。
ルドル・フォン・シュトロハイム: 第2部の登場人物。シチリアの石仮面回収に深く関わっている。

小説版オリジナルの登場人物

シーラE（シィラ・カペッツート）: ボス親衛隊の女性。復讐のために組織に入り、フーゴと共に麻薬チームと戦う。過去に姉を殺されており、復讐心を抱えている。スタンドは「ヴードゥー・チャイルド」。
カンノーロ・ムーロロ: 情報分析チームの男性。麻薬チーム討伐に協力する。実は組織を裏切っていた過去があり、今回の任務でも裏で暗躍している。スタンドは「オール・アロング・ウォッチタワー」。
ジャンルッカ・ペリーコロ: パッショーネの幹部。ジョルノに忠誠を誓っている。

麻薬チーム

マッシモ・ヴォルペ: 麻薬チームの中心人物。フーゴの大学時代の同期。スタンドは「マニック・デプレッション」。
ビットリオ・カタルディ: 麻薬チームのメンバー。短絡的な性格。スタンドは「ドリー・ダガー」。
アンジェリカ・アッタナシオ: 麻薬チームのメンバー。重い病気を抱え、麻薬中毒。スタンドは「ナイトバード・フライング」。
ヴラディミール・コカキ: 麻薬チームのリーダー。冷静な老人。スタンドは「レイニーデイ・ドリームアウェイ」。

書籍情報

ハードカバー版: ISBN 978-4-087-80616-8 （2011年9月16日発売）
新書版: ISBN 978-4-087-03310-6 （2014年3月19日発売）
文庫版: ISBN 978-4-087-45598-4 （2017年6月22日発売）
電子版: 2017年6月22日発売

関連項目

ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル - フーゴが登場し、スタンドにはディストーションモードがある。
レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン『毒蛇使い』 - 冒頭で引用されている。
ボブ・ディラン『見張り塔からずっと』 - 『トリッシュ、花を手向ける』で引用されている。
ジョジョの奇妙な冒険 II ゴールデンハート/ゴールデンリング - Parte5の先行ノベライズ作品。本作とは異なる内容。

この小説は、原作ファンはもちろんのこと、ジョジョの世界を深く知りたい方にもおすすめです。

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