恵王 (魏)

恵王の生涯とその影響

恵王（けいおう）は紀元前400年から紀元前319年まで生きた、中国戦国時代の魏の君主であり、王を名乗った初の君主として知られています。彼の本名は姫罃（おう）であり、『孟子』では「梁の恵王」としても記されています。

生い立ちと即位

恵王は武侯の嫡子として生まれ、彼の父である武侯が亡くなった後、異母兄の公子仲緩と王位を巡って争いました。魏は当時、中国の中央に位置し、最大勢力を誇っていました。恵王は自ら「夏王」や「天子」と名乗り、周王朝を凌駕する意志を示しました。しかし、周辺には強国が数多く存在し、武侯の晩年には他国への攻撃が必要とされる状況にありました。戦火が絶えない中、恵王の政権は苦しめられていました。

即位後、恵王は趙や斉の介入を受け、秦・宋・韓などと争うことが多く、国家の発展は非常に難しい状況にありました。この頃、韓の公族出身の宰相・公叔痤は临終の際に彼の食客である公孫鞅を推奨し、彼が魏を強大にすると約束しました。しかし、恵王は公叔痤の言葉を信じず、公孫鞅を登用することがありませんでした。その結果、公孫鞅は秦に渡り、国政の改革を成功させていくことになります。

戦争と失地

紀元前341年、馬陵の戦いで魏軍は斉軍に敗北し、恵王の嫡子である太子申が捕虜となる大打撃を受けました。この出来事は、後の秦軍の侵攻を招き、商鞅との連携で魏はさらに影響力を失います。翌年、秦は西から攻撃を仕掛け、恵王は遂に都を安邑から大梁へと移さざるを得なくなります。この一連の出来事は魏の地位を一層危うくしました。

恵王はその後、失意の中で溺愛していた太子申の異母弟である公子赫を世子に定めました。また、彼は公孫鞅を救う機会を逃したことに対して強い後悔を抱くようになりました。度重なる敗戦から、魏は衰退し、韓と共に斉に服属する結果となります。恵王は紀元前319年、82歳でその生涯を閉じ、末息子の太子嗣が後を継ぎました。

孟子との対話

恵王は哲学者孟子との対話でも知られており、『孟子』の冒頭の章句には彼との会話が記されています。恵王は自らの行いを誇りに思い、「洪水時に民を移住させ、飢饉の際には食料を提供しているのに、どうして人口が増えないのか」と質しました。これに対し、孟子は戦場の兵士を例に取り、無駄な戦争が民を疲弊させていることを暗に指摘しました。この話の中で、「五十歩百歩」という故事成句も生まれました。

恵王の時期、魏は韓・趙・斉・秦に敵対し続け、戦争の激化が民を苦しめていました。彼の好戦的な性格が失策を招いていたのです。孟子はその性格を改めなければ、どれだけ努力をしても民はついてこないと警告しました。

結論

恵王の治世は、権力と戦争、そしてその結果の苦しみが深く結びついていました。彼の選択と悲観的な結末は、後の時代に多くの教訓を与えることとなるのです。

もう一度検索