悲しみの訪問者

「悲しみの訪問者」 - 桂銀淑、新たな境地を切り開いた一曲

「悲しみの訪問者」（かなしみのほうもんしゃ）は、日本の演歌・歌謡界で活躍する歌手、桂銀淑（ケイ・ウンスク）が1991年7月26日に発表したシングルです。彼女にとって通算9枚目にあたるこの楽曲は、東芝EMI（現在のユニバーサルミュージックLLC/EMI Recordsの一部）よりリリースされました。

音楽性の転換点

桂銀淑は、1985年の日本デビュー以来、「大阪暮色」を皮切りに、前作「東京HOLD ME TIGHT」に至るまで、実に8作品連続で作曲家・浜圭介氏とタッグを組んできました。浜氏が生み出すメロディは、桂銀淑の哀愁と力強さを兼ね備えた独特の歌声と絶妙に調和し、彼女のキャリア初期における成功を支えてきました。

しかしながら、9枚目のシングルとなる本作「悲しみの訪問者」では、この長年の協力関係に変化が見られました。作曲に初めて浜圭介氏以外の人物として、数々のヒット曲を手がけてきた著名な作曲家、三木たかし氏を起用したのです。この作曲家の交代は、桂銀淑の音楽性が新たなフェーズに入ったことを示唆しており、ファンの間でも大きな関心を集めました。三木たかし氏による楽曲が、桂銀淑の表現世界にどのような彩りを加えるのかが注目されました。

チャート成績と商業的成功

「悲しみの訪問者」は、リリース後に日本の主要な音楽チャートであるオリコンシングルチャートにおいて、顕著な成績を記録しました。週間チャートの最高位こそ突出したものではありませんでしたが、それ以上に注目すべきは、そのチャートへの登場期間の長さです。この楽曲は、オリコンの100位圏内に足掛け27週にわたってランクインし続けました。これは、特定の時期に集中的に売れるというよりも、じっくりと時間をかけて多くのリスナーに浸透し、長く愛された証であり、歌謡曲としては稀有な息の長いロングヒットとなりました。この商業的な成功は、新たな作曲家とのコラボレーションが市場にも好意的に受け入れられたことを証明しました。

紅白歌合戦での披露

楽曲のロングヒットは、その年の年末の音楽界最大のイベントの一つであるNHK紅白歌合戦への出場へと繋がりました。桂銀淑は、第39回（1988年）から3年連続で紅白に出場しており、「悲しみの訪問者」で出場した第42回（1991年）は、彼女にとって4年連続となる出場となりました。国民的な番組である紅白の舞台でこの楽曲を披露したことは、その年の代表曲として広く認知される機会となり、桂銀淑の歌手としての地位を一層確固たるものにしました。

収録曲の詳細

このシングルには、表題曲である「悲しみの訪問者」に加え、カップリング曲として「バラ色の人生」が収録されています。両曲とも、作詞は多くのヒット曲を生み出した作詞家、荒木とよひさ氏が担当しています。作曲は、両曲ともに三木たかし氏が手がけました。編曲については、「悲しみの訪問者」を川村栄二氏が担当し、カップリングの「バラ色の人生」は若草恵氏が担当しています。同じ作詞・作曲家による楽曲でありながら、異なるアレンジャーを迎えることで、それぞれの楽曲が持つ異なる情感や雰囲気が引き出されています。

悲しみの訪問者
作詞: 荒木とよひさ
作曲: 三木たかし
編曲: 川村栄二
バラ色の人生
作詞: 荒木とよひさ
作曲: 三木たかし
編曲: 若草恵

まとめ

「悲しみの訪問者」は、桂銀淑のキャリアにおいて、長年続いた浜圭介氏とのタッグから離れ、三木たかし氏という新たな作曲家との出会いによって生まれた、非常に重要な意味を持つ作品です。この挑戦は、オリコンチャートでのロングヒットという商業的な成功、そして4年連続となるNHK紅白歌合戦への出場という形で結実しました。1991年の日本の音楽シーンにおいて、また桂銀淑の豊富なディスコグラフィの中でも、新たな扉を開いた一曲として特筆されるべき楽曲です。

関連事項

* 1991年の音楽

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