想い出のウエスタン・ジャンボリー

1969年、日本のカントリー＆ウェスタン界の精鋭たちが集結した企画盤、『想い出のウエスタン・ジャンボリー』(All Japan Western Jamboree)が東芝音楽工業よりリリースされました。ウェスターン・オール・スターズ名義の本作は、日本のカントリー・ウェスタン史における過去の名盤から厳選された音源を収録した、当時における重要なベスト・セレクションです。

本作に収められた音源は、日本のカントリー・ウェスタン史に名を刻むライブアルバム『トウキョウ・ジャンボリー』(1958年)、『トウキョウ・ジャンボリー第2集』(1959年)、そして『東芝フォノブック(ウエスタン編)』から再編集されました。これらのオリジナル盤は、当時のウェスタン・ブームを伝える貴重な記録であり、本作はそれらの名演を手軽に聴ける機会を提供しました。

アルバムの最大の魅力は、日本のカントリー・ウェスタンシーンを牽引した豪華な参加メンバーです。「ウェスターン・オール・スターズ」として、個々の活動で知られる実力派シンガーたちが集結しました。特にリードボーカルを務めたシンガーとしては、菊地正夫、釜萢ヒロシ、寺本圭一、黒田美治、斎藤任弘、井上高、関口良信、さわたり順といった面々が名を連ね、それぞれの個性を活かしたボーカルを披露しています。

彼らを支えるバックバンドもまた、当時の最高峰のミュージシャンたちで構成されています。スティール・ギターの原田実、大森利雄、エレクトリック・ギターの瀬谷福太郎、フィドルの藤本精一、アコーディオンおよびピアノの新井利昌、ベースの植田嘉靖、スネア・ドラムの田邊昭知といった名手が集い、堅固な演奏で楽曲を彩っています。特筆すべきは、後のエレキ・ブームの立役者となる寺内タケシが、「ジャンバラヤ」(Side 1, 8曲目)の一曲のみでエレクトリック・ギターを担当している点です。これは当時のシーンの交流を示す興味深い参加と言えるでしょう。

本作には、カントリー・ウェスタンを代表するスタンダードナンバーを中心に、珠玉の全16曲が収録されています。Side 1とSide 2に分かれた収録曲は、当時の日本のミュージシャンたちがどのように海外の楽曲を消化し表現していたかを示す貴重な記録です。各曲のタイトルと担当シンガー（記載のあるもの）は以下の通りです。

Side 1
1. ミネトンカの湖畔にて (菊地正夫)
2. ティーンエイジ・ブギー (釜萢ヒロシ)
3. 太く短かく (寺本圭一)
4. 北風 (黒田美治)
5. キャンディー・キッセス (斎藤任弘)
6. 新聞売り子のジミー少年 (井上高)
7. ロング・ゴーン・ロンサム・ブルース (関口良信)
8. ジャンバラヤ (さわたり順)

Side 2
1. キャトル・コール (菊地正夫)
2. スローリー (釜萢ヒロシ)
3. 時経れば (寺本圭一)
4. コールド・コールド・ハート (黒田美治)
5. ア・フール・サッチ・アズ・アイ (斎藤任弘)
6. カウントリー・チャーチ (井上高)
7. ラヴシック・ブルース (関口良信)
8. サン・アントニオ・ローズ

本作は、1950年代後半から1960年代にかけての日本のカントリー・ウェスタンシーンの熱気と高い演奏水準を現代に伝える貴重なアーカイヴです。往年のファンにとってはもちろん、日本のポピュラー音楽史に興味を持つ若い世代にとっても、聴き応えのある一枚でしょう。この情報は、リリース当時のライナーノーツに基づいています。

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