寺本圭一

寺本 圭一

寺本 圭一（てらもと けいいち）氏は、1933年（昭和8年）5月30日に東京都で生まれ、日本のカントリー・ミュージックシーンを牽引してきた第一人者として知られます。単に歌手としてだけでなく、作詞家、作曲家、そして音楽プロデューサーとしても多岐にわたる活動を展開してきました。

経済界の名門にルーツを持つ家庭に育ち、祖父は不動貯金銀行を創設した牧野元次郎氏、父はその頭取を務めた寺本五郎氏でした。幼少期から慶應義塾の教育課程を歩み、幼稚舎から普通部、高等学校へと進んだ後、大学は青山学院大学へと進学しました。

青山学院大学在学中に音楽への情熱を深め、プロミュージシャンへの道を志します。1957年、後に大手芸能プロダクションを立ち上げる堀威夫氏が明治大学を卒業したばかりの頃に、彼と共にロカビリーバンド「スウィング・ウエスト」を結成。寺本氏はそのボーカリストとして、当時の音楽界に大きな足跡を残しました。日本におけるロカビリー、そしてウェスタン音楽の隆盛を象徴するイベントであった「日劇ウエスタンカーニバル」には、その第1回開催時から継続して出演し、多くの聴衆を魅了しました。

スウィング・ウエストを離れた後も、寺本氏の音楽活動は精力的に続けられました。渡辺プロダクションに所属し、自身の冠バンドである「寺本圭一とカントリー・ジェントルメン」を結成。このバンドは、寺本氏のギターとボーカルを中心に、斎藤任弘（ギター、ヴォーカル）、山田幸保（スティール・ギター）、金城貞則（エレキ・ギター）、小野光郎（ベース）、鈴木恒雄（フィドル）、木村皓昭（フィドル、ピアノ）、島悦夫（ドラムス）といった個性豊かなオリジナルメンバーによって構成され、日本のカントリーミュージックの可能性を広げました。また、著名なスティール・ギター奏者である原田実氏が率いる「原田実とワゴン・エース」にも参加するなど、様々な形でカントリー音楽の普及に貢献しました。

音楽活動と並行して、多方面での才能を発揮しました。渡辺プロダクション在籍時には、同社が制作し、日本教育テレビ（現在のテレビ朝日）で1959年に放送されていた音楽番組『ザ・リクエストショー』で司会を務め、テレビタレントとしても親しまれました。さらに、音楽プロデューサーとしては、グループサウンズの代表的な存在であるヴィレッジ・シンガーズのメジャーデビューに深く関わり、彼らの初期の活動を支えました。自作曲としても、大野義夫氏に提供した「君を呼ぶヨーデル」や、ヴィレッジ・シンガーズのデビュー曲として知られる「暗い砂浜」（作詞）など、多くの楽曲を手がけています。

長年にわたるキャリアは、2000年にプロデビュー50周年という大きな節目を迎えました。2007年には脳梗塞で一時的に活動休止を余儀なくされましたが、驚異的な回復を見せ、現在もなお音楽活動を継続しており、日本のカントリーミュージックの灯をともし続けています。

その膨大な活動の記録として、多数のシングル、LP、CDが発表されています。初期の「トウキョウ・ジャンボリー」シリーズや、自身のバンド名義でのアルバム「寺本圭一のウエスタン・カーニバル」、再発CD「ウエスタン・ヒッツ」など、日本のカントリー音楽史を彩る作品群は多岐にわたります。また、自身の音楽人生を振り返った著書「カントリー音楽一筋 寺本圭一が語るカントリー音楽と人生」（2010年、かまくら春秋社）も出版しており、カントリー音楽への深い愛情とその哲学を伝えています。半世紀以上にわたり日本のカントリー界の第一線で活躍し続ける、まさに生ける伝説と言える存在です。

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