黒田美治

黒田美治（くろだ びじ）

日本のカントリー・ウエスタン歌手。本名は黒田義治（くろだ よしはる）。1930年9月25日にイギリスのロンドンで生まれ、2001年2月28日に亡くなった。彼は、旧福岡藩大老・黒田男爵家（三奈木黒田家）の次男であり、男爵黒田一義の孫にあたる家系に生まれた。戦後間もない日本において、カントリー・ウエスタンというジャンルをいち早く取り入れ、その普及に尽力したことで知られる先駆者である。

英国での出生後、日本へ帰国。旧制の学習院高等科を卒業し、学習院大学を経て慶應義塾大学でも学んだ。学習院大学在学中に、後に日本のテレビ界で重要な役割を果たすことになる井原高忠と出会い、これが彼の音楽キャリアの始まりにおける重要なきっかけとなる。

慶應義塾大学を卒業後、黒田美治は学習院時代からの盟友である井原高忠と共に、カントリー・ウエスタンのバンド、「チャック・ワゴン・ボーイズ」を結成した。このグループは、当時の日本の音楽シーンではまだ珍しかったカントリー音楽を積極的に演奏し、次第に注目を集めるようになった。後に、日本を代表するカントリー歌手の一人となる寺本圭一もメンバーとして加わり、グループはさらに勢いを増した。チャック・ワゴン・ボーイズは、進駐軍向けクラブでの演奏などを通じて実力を磨きつつ、日本人向けのコンサートやラジオ出演などを通じて、カントリー音楽の魅力を広めていった。彼らの活動は、戦後の日本のポピュラー音楽において、カントリー・ウエスタンという新たなジャンルを確立する上で、極めて重要な役割を果たした。黒田美治の伸びやかな歌声と、バンドの本格的なサウンドは、多くの音楽ファンを魅了し、人気歌手としての地位を確立した。また、彼の妹が、プロ野球選手そしてタレントとして幅広く活躍した板東英二と結婚したことから、黒田は板東の義兄にあたる関係になった。

音楽活動の全盛期を過ぎた後、黒田美治は一時的に音楽の第一線から退いた時期があった。その頃、義弟である板東英二が経営していたサウナ風呂でマネージャーを務めていたこともあったと伝えられている。私生活においては、離婚を経験した後、別の女性と事実婚の関係を結び、その間に一人の子供をもうけている。晩年まで音楽への情熱を持ち続けつつも、2001年にその生涯を終えた。

黒田美治とチャック・ワゴン・ボーイズは、日本の初期カントリー・ウエスタン音楽の歴史において、数多くの録音を残している。特にSP盤が多く、当時の貴重な音源として現在も一部で知られている。以下に、彼の主なディスコグラフィーを記す。

ディスコグラフィー

SP盤

東京バガボンド (黒田美治とチャック・ワゴン・ボーイズ)
日本コロムビア A-871 (1950.07)
B面: 織井茂子「娘とサンダル」
牧場は牛ばかり (黒田美治とチャック・ワゴン・ボーイズ)
日本コロムビア A-912 (1950.07)
B面: 加藤禮子「若い学生さん」
陽気なマダム (黒田美治とチャック・ワゴン・ボーイズ)
日本コロムビア A-921 (1950.09)
B面: 織井茂子「わしゃつんぼ」
銀座フーピー娘 (黒田美治とチャック・ワゴン・ボーイズ、若原春江)
日本コロムビア A-1104 (1951)
B面: 池眞理子「炭燒ブギ」
僕らの青春 (黒田美治)
日本コロムビア A-1309 (1952.01)
B面: 有木山太・グラディス堤「よいとこ娘」
アイアイ銀座 (黒田美治、惠ミチ子)
日本ビクター V-41074 (1953.06)
B面: 生田惠子「銀座マンボ」
ささやき c/w 愛の想ひ出 (黒田美治)
日本ビクター A-5133 (1953.09)
ノー・アザー・ラヴ c/w 楽園に帰る (黒田美治)
日本ビクター A-5148 (1953.10)

LP盤（V.A.は参加オムニバス盤）

トウキョウ・ジャンボリー (V.A.)
東京芝浦電気 JPO-1002 (1958)
ゴーイング・マイ・カントリー・ウェイ (黒田美治)
グリーン・シティー/日本ビクター SJET-8168 (1969)
懐かしのポピュラー大全集 (V.A.)
ポリドール MR-9072/3 (1970.12)
バックは原田実とワゴン・エース
日本のジャズ歌手たち: ジャズコン華やかなりし頃 (V.A.)
日本ビクター SPX-1031/2 (1975)
「Don't Let The Stars Getting In Your Eyes」収録
日本のウエスタン歌手たち: 進駐軍華やかなりし頃 (V.A.)
日本ビクター SPX-1034 (1976)
チャック・ワゴン・ボーイズとして参加
TOKYOジャンボリー'83 (V.A.)
* 東芝EMI EWS-66027/8 (1983)

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