愛すべき女・女たち

『愛すべき女・女たち』(原題: Le Plus vieux métier du monde)は、1967年に公開されたフランス、イタリア、西ドイツ合作のオムニバス映画です。この映画は、国際的な制作陣と多様なスタイルを特徴としており、単なるコメディを超えた、深みのある作品となっています。

本作の企画は、フランスと西ドイツのプロデューサー陣によって立案されました。彼らは、当時イタリアで流行していたコメディオムニバス映画に着想を得ており、イタリアの監督2名を起用することで、そのスタイルを踏襲しています。さらに、フランスからはヌーヴェルヴァーグを代表する監督やベテラン監督、西ドイツからも実力派監督が参加するなど、国際色豊かな制作体制が敷かれました。

監督陣には、イタリアを代表するフランコ・インドヴィナとマウロ・ボロニーニ、フランスからはクロード・オータン＝ララ、ジャン＝リュック・ゴダール、フィリップ・ド・ブロカ、そして西ドイツからはミヒャエル・フレガールが参加。それぞれが自身のスタイルを活かした短編を製作しています。中でも、ジャン＝リュック・ゴダールとアンナ・カリーナがタッグを組んだ『未来展望』は、ゴダール作品の中でも重要な位置を占めており、この作品がゴダールとカリーナの最後の合作となったことでも知られています。

音楽は、映画『シェルブールの雨傘』などで知られるミシェル・ルグランが担当。全編を通して統一感のある音楽が、各短編の個性と調和し、作品全体の雰囲気を彩っています。

それぞれの短編は独立した物語で、時代設定やテーマも様々です。古代から現代まで、様々な時代背景の中で女性たちが織りなす物語は、ユーモラスなシーンからシリアスなシーンまで、観客を飽きさせません。登場人物も、魅力的な女優陣が顔を揃え、それぞれの役柄を熱演しています。

例えば、ミシェル・メルシエやガブリエレ・ティンティが出演するインドヴィナ監督の短編『神代に起った女の変身』は、古代を舞台にした物語。一方、ジャンヌ・モローとジャン＝クロード・ブリアリが出演するド・ブロカ監督の短編『貴族好み』は、華麗な貴族社会を描いています。また、ラクエル・ウェルチが出演するフレガール監督の短編『手管に踊る倖せ』は、時代劇のような雰囲気の作品となっています。そして、ゴダール監督の『未来展望』は、未来社会における恋愛や人間関係を、ゴダール独特の視点で描いた作品です。

『愛すべき女・女たち』は、多様な監督、俳優、そして音楽が織りなす、華やかで多層的なオムニバス映画です。それぞれの短編が独立した作品として成立しつつ、全体としては統一感があり、観客に様々な感情を呼び起こします。イタリア式コメディの軽快さ、ヌーヴェルヴァーグの革新性、そして巨匠監督たちの熟練の技が融合した、まさに国際合作映画の傑作と言えるでしょう。日本ではテレビ放送もされており、日本語吹替版も存在するなど、日本でも広く親しまれてきた作品です。この映画は、映画史において重要な位置を占め、後世の映画制作にも多大な影響を与えたと言えるでしょう。それぞれの短編は個性的でありながら、全体として完成度の高い作品となっています。

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