愛の嵐の中で

1978年に製作・公開された日本映画です。東宝とサンミュージックの提携作品として生まれ、小谷承靖が監督を務めました。

作品概要

本作は、当時トップアイドルとして人気を博していた桜田淳子が主演した、彼女にとって単独で主役を務めた五回目の映画作品です。そして、奇しくもこれが現在のところ彼女の単独主演映画としては最後の作品となっています。

物語は、単なる青春や恋愛といったテーマに終始することなく、コミカルなタッチを織り交ぜたサスペンスドラマとして構成されています。主演の桜田淳子に加え、実力派として知られる個性豊かな俳優たちが多数出演しており、シリアスな展開の中にユーモラスな味付けを加えることで、独特の雰囲気を醸し出しています。

撮影は、東京の賑やかな街並みである六本木や、古書店街として知られる神田神保町など、都市的なロケーションで行われたほか、風光明媚な静岡県西伊豆にある黄金崎のような自然豊かな場所でも敢行されました。これらの多様なロケーションが、物語の様々な場面に合わせた背景を提供しています。

キャスト

主演の黛夏子役を桜田淳子が演じました。脇を固める共演者陣も非常に豪華です。主人公に関わる主要な登場人物として、佐伯次郎役に篠田三郎、風間修役に中村敦夫、深水役に田中邦衛、戸川役に岸部四郎、岡野役に岸田森、三村役に地井武男といった、当時の映画・テレビドラマで活躍していた個性派俳優たちが顔を揃えています。また、主人公の姉である黛雪子を夏純子、圭子を泉ピン子、刑事役を稲葉義男が演じています。さらに、風間の婚約者役で中山麻理が出演しており、物語に奥行きを与えています。特に、癖のある役柄を得意とする俳優たちが、それぞれの持ち味を生かした演技を見せ、作品全体のコメディ要素やサスペンス要素を際立たせています。

スタッフ

本作の制作陣には、監督の小谷承靖のほか、製作に藤井浩明、企画に相澤秀禎、市山達巳が名を連ねています。脚本は白坂依志夫と安本莞二の二人が共同で担当し、複雑に絡み合う人間関係や事件を描きつつ、コミカルなセリフ回しや状況設定を盛り込んでいます。音楽はアニメや特撮作品でも数多くの名曲を生み出した渡辺岳夫が手掛け、作品のムードを高めています。撮影は上田正治が担当し、都市の風景や自然の景観を捉え、物語の雰囲気を視覚的に表現しました。

エピソード

本作には、後に多くの名作を手掛ける映画監督、大林宣彦がゲスト出演しています。彼は劇中で審査員の一人を演じており、これは小谷監督と大林監督が、以前CM制作の現場で共に仕事をした際に親しくなった友人同士であったことから実現しました。この友情は作品を超えて続き、その“お返し”として、1981年に大林監督が監督した角川映画『ねらわれた学園』には、小谷監督が教師役として出演するという相互協力がありました。

また、小谷監督は、本作での桜田淳子の主演、そしてコミカルタッチのサスペンスという形式に手応えを感じたのか、後に再び桜田淳子を主演に迎えて同路線の作品を制作しています。その代表例が、1982年にテレビドラマシリーズ「火曜サスペンス劇場」の中で放送された『危機一髪の女』です。これもまた、桜田淳子主演によるユーモラスなサスペンスドラマとして制作されました。

同時上映作品

本作は劇場公開時、別の東宝作品と二本立てで上映されました。同時に上映されたのは、河崎義祐が監督を務め、当時のトップスターであった三浦友和と、実力派俳優の小林桂樹、そして女優の原田美枝子が出演した作品『残照』です。タイプの異なる二作品がカップリング上映されたことで、幅広い層の観客が劇場に足を運ぶこととなりました。

愛の嵐の中で