愛よ人類と共にあれ

映画『愛よ人類と共にあれ』の詳細

『愛よ人類と共にあれ』は、1931年に製作・公開された日本のサイレント映画で、松竹蒲田撮影所によって制作され、松竹キネマが配給を担当しました。この映画は、2部構成で、前篇と後篇があり、同年の4月17日に一挙公開されました。全体の上映時間は4時間を超え、日本映画史においても重要な位置を占めています。

製作と公開の背景

本作は松竹蒲田撮影所が制作した最初の大規模な作品で、撮影が開始されたのは1930年にさかのぼります。作品の詳細を見ていくと、撮影には実に丸2年を費やし、使用されたネガは20万フィートに達しました。このような膨大な作品には、延べ8万人もの出演者が関与し、これにより、映画のスケールと規模の大きさが理解できます。

特に後篇ではアメリカ合衆国でロケーション撮影が行われ、アメリカのヴォードヴィリアンであるマック・スウェインが出演している点が特徴的です。この国際的なキャストの導入により、映画に新たな視点と多様性がもたらされました。

監督とスタッフ

映画は、島津保次郎が監督として指揮を執りました。彼はこの作品の他にも多くの著名な映画を手掛けており、その才能は広く認識されています。特に本作では、豊田四郎や吉村公三郎などの優れたスタッフが「監督協力者」として名を連ねており、それぞれが独自の視点と技術を持ち寄っています。

また、撮影技術に関しては、桑原昴と長井信一が担当。この二人はフィルムのビジュアル表現を高めるために、革新的な技術を駆使し、映画の美術にも力を入れました。美術には脇田世根一や河野鷹思などが関与し、独自の世界観が構築されています。

作品の評価

公開当初は、興行成績は悪くなかったものの、作品の長さや内容が冗長であるとの批評も多くありました。特に、4時間を超える上映時間は観客の集中力を試すものであり、それが評価に影響を与える要因となりました。しかし、その後の視点からは、この映画の芸術的及び歴史的価値が見直されています。現在においても、日本映画史において欠かせない作品とされています。

現在の評価と保存

本作に関するフィルムは、東京国立近代美術館フィルムセンターにおいて241分の上映用35mmプリントが現存しています。日本国内でのビデオグラムとしての発売はないものの、映画愛好家や研究者たちにとって重要な資料となっています。

2010年には、イタリアで開催されたポルデノーネ無声映画祭において再評価され、特集プログラムの一環として上映されました。この上映では、無声映画伴奏者の柳下美恵が全編にわたり演奏を行い、観客からスタンディング・オベイションを受けるなど、その芸術性が再び注目を浴びました。

まとめ

『愛よ人類と共にあれ』は、当時の日本映画において他に類を見ない大作であり、文化と歴史を豊かに反映しています。時間を超えて、今なお多くの人々に影響を与え続けている作品と言えるでしょう。

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