愛國戰隊大日本

愛國戰隊大日本：冷戦下のパロディと特撮技術の融合

『愛國戰隊大日本』は、1982年にダイコンフィルムが制作した8mmアマチュア特撮作品です。スーパー戦隊シリーズのフォーマットを借り、当時のソ連脅威論を背景にしたパロディとして制作されました。

概要

本作は、1983年の日本SF大会「DAICON4」のプロモーション作品として発表されました。精巧なコスチューム、火薬を用いた爆発、ミニチュアによる巨大ロボットなど、アマチュア作品としては異例の完成度を誇り、大きな話題を呼びました。ロケ地には万博記念公園や大阪城公園が使用され、太陽の塔やエキスポタワーが背景に映し出されています。

オープニングテーマは『太陽戦隊サンバルカン』の主題歌の替え歌で、タイトルロゴもサンバルカンを模倣しています。大日本の登場シーンや、富士山をモチーフにした決めポーズなど、随所にサンバルカンへのオマージュが見られます。エンディングテーマも『宇宙戦士バルディオス』の挿入歌の替え歌が使用されています。

制作意図は「テーマがなくてもテーマがあるように見せかける」ことで、ソ連を揶揄しつつ、右翼的なイメージもパロディとして取り入れています。平戦闘員「ハラショマン」のコスチュームには大阪芸術大学のジャージが使用され、細部にまで遊び心が散りばめられています。

ストーリー

悪の組織「レッドベアー」が、洗脳五カ年計画を実行するため、怪人や戦闘員を使って子供たちの教科書を赤く塗りつぶそうとします。愛國戰隊大日本は、巨大空中母艦「大日本戰艦」と巨大合体ロボ「大日本絡操」を駆使し、アカの脅威から日本を守るために戦います。

登場人物

アイ・カミカゼ (赤)：大日本の行動隊長。常に先頭に立ち、有事に備えて鍛錬を怠らない。
アイ・ハラキリ (青)：責任感が強く、常に腹を切ろうとするサブリーダー。
アイ・ゲイシャ (桃)：敵さえも魅了する紅一点。
アイ・スキヤキ (緑)：怪力の持ち主で、すき焼きを愛する。
アイ・テンプラ (黄)：フライショップで働く料理人。

メカニック

愛國ジェット・帝釈天號：アイ・カミカゼが操縦する1号機で、ロボットの頭部となる。
愛國マシーン・毘沙門天號：アイ・スキヤキが操縦する2号機で、ロボットの胴体となる。
愛國タンク・兜率天號：アイ・テンプラが操縦する3号機で、ロボットの脚部となる。
大日本戰艦：大日本の母艦で、愛國メカを搭載する。
大日本絡操：帝釈天號、毘沙門天號、兜率天號が合体した巨大ロボット。必殺技は「愛國富士山返し」。

論争

本作は、反共主義的な右翼的内容に見える一方で、右も左も笑い飛ばすパロディであるため、一部から「反社会主義的」「右翼的」と批判され、「『愛國戰隊大日本』論争」と呼ばれる議論を呼びました。

影響

『愛國戰隊大日本』は、自主制作映画における戦隊パロディの先駆けとなり、後の作品に影響を与えました。また、ダイコンフィルムのメンバーは、後にアニメ業界で活躍し、日本のアニメ文化に大きな足跡を残しました。

関連情報

監督：赤井孝美
特撮監督：庵野秀明
* 制作：ダイコンフィルム

『愛國戰隊大日本』は、アマチュア精神とパロディセンスが融合した、特撮史に残る異色作として、今もなお多くのファンに愛されています。

もう一度検索