戦闘員

戦闘員とは：国際法上の定義と資格

戦闘員とは、国際的な武力紛争において、敵対行為に直接参加する権利を有する者のことです。交戦者とも呼ばれ、国際法上、文民とは区別されます。ここでは、戦闘員の定義、資格、義務、そして国際法における位置づけについて詳しく解説します。

戦闘員の定義と文民との区別

武力紛争における国際法では、すべての人が「文民」または「戦闘員」のいずれかに分類されます。

戦闘員: 武力紛争の間、敵対行為に直接参加する権利を持ち、合法的に敵の戦闘員を攻撃できます。また、捕虜としての待遇を受ける権利を有します。
文民: 敵対行為に直接参加する権利はありませんが、戦闘員からの攻撃を受けないという保護を受けます。

軍事目標主義の原則に基づき、攻撃対象は戦闘員や軍事施設に限定され、文民や民用物を攻撃してはなりません。この原則を守るため、戦闘員は「自己と文民たる住民を区別する」義務（区別義務）を負います。

戦闘員の資格要件

戦闘員は、「紛争当事者の軍隊の構成員」と「群民兵」に分類されます。

紛争当事者の軍隊の構成員: 正規軍、民兵隊、義勇隊、組織的抵抗運動団体などが該当します。ただし、衛生要員や宗教要員は例外的に戦闘員とはみなされません。
群民兵: 占領されていない地域の住民が、侵入する敵軍に抵抗するために自発的に武器を取る者を指します。一定の条件を満たす場合に戦闘員資格が与えられます。

予備役や民間軍事会社の従業員などは、状況によって文民とみなされる場合があります。

軍隊の定義

「紛争当事者の軍隊」とは、以下の要件を満たす武装行為主体のことです。

1. 紛争当事者のいずれかと結びついていること
2. 組織されていること
3. 責任ある指揮に基づいていること

これらの要件を満たせば、政府や敵対勢力の承認は不要です。州兵、税関、警察隊なども、事実上軍隊としての任務を遂行している場合は、国際法上軍隊とみなされます。

不正規軍の種類

軍隊は、正規軍と不正規軍に分類されます。不正規軍には、民兵隊、義勇隊、組織的抵抗運動団体が含まれます。

民兵隊: 戦時に政府が人民を招集して組織した団体
義勇隊: 有志の人民が組織した団体
* 組織的抵抗運動団体: 占領地の住民が占領軍に抵抗するために組織した武装団体（レジスタンス、パルチザン）

戦闘員の義務と国際法の遵守

戦闘員は、敵対行為を行うにあたり、国際法を遵守しなければなりません。無制限な戦闘は許されておらず、国際法に違反した戦闘は戦争犯罪となります。

戦闘員資格の条件

戦闘員資格を得るには、ハーグ陸戦規則やジュネーヴ諸条約などの国際法で定められた条件を満たす必要があります。これらの条件は、正規軍と不正規軍、群民兵で異なり、現在でも議論が続いています。

敵対行為の定義

戦闘員のみが直接参加する権利のある「敵対行為」とは、以下の要件をすべて満たす行為を指します。

1. 危害の敷居：敵対する紛争当事者の軍事行動・軍事能力に不利益を及ぼす、または保護されるべき人・物に死傷・損壊を与えるおそれのある行為
2. 直接因果関係：行為と①の危害の間に直接的な因果関係がある
3. 交戦者とのつながり：味方の紛争当事者を支援し、敵対する紛争当事者を害する目的で行われた行為

正当防衛などの目的で行われた行為は、敵対行為には該当しません。

諜報活動と傭兵、少年兵

諜報活動を行う者は、原則として捕虜の待遇は与えられません。ただし、軍服を着用している場合や、敵対勢力に捕らえられる前に所属軍隊に復帰した場合は例外となります。

傭兵は、一定の条件を満たす場合に戦闘員資格を失います。また、15歳未満の児童を兵士として採用したり、戦闘行為に参加させることは戦争犯罪とみなされます。

医療要員と国連の活動

医療要員は、傷病者の治療などに従事する者を指し、原則として戦闘員ではありません。ただし、文民保護組織の要員は、一定の条件を満たせば保護されます。

PKO（国連平和維持活動）を行う国連部隊は、原則として戦闘員ではありませんが、自衛などのために戦闘行為に関与する場合は、紛争当事者とみなされることがあります。

報道関係者と不法戦闘員

武力紛争地域で活動する報道関係者は、文民としての地位を有します。ただし、軍隊の認可を受けている報道関係者は、捕虜となる権利を有します。

戦闘員資格のない者が敵対行為に直接参加した場合、「不法戦闘員」と呼ばれます。不法戦闘員は文民として扱われますが、敵対行為への参加は犯罪とみなされます。

まとめ

戦闘員は、国際法によって定義され、権利と義務を負っています。戦闘員と文民の区別、資格要件、国際法の遵守は、武力紛争における人道的原則を守る上で非常に重要です。

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