愛知県立鳳来寺高等学校

愛知県新城市にかつて位置していた公立高等学校、愛知県立鳳来寺高等学校（あいちけんりつ ほうらいじこうとうがっこう）は、70年以上にわたる歴史を持ちましたが、愛知県の県立高等学校再編計画に伴い、2011年3月31日をもって閉校しました。閉校に先立ち、2009年度からは新たな生徒の募集を停止していました。

沿革

本校の歴史は、1935年4月に私立学校令に基づき鳳来寺が設立した「鳳来寺女子高等学園」に始まります。昭和初期、農山村地域の振興が課題であった時代に、弘法大師1100年御遠忌記念事業の一環として計画され、女子教育の場として開校しました。学校運営には鳳来寺の財産が生む収益の一部が充てられ、1935年度には財団法人鳳来寺女子高等学園も設立されました。

当初は各種学校でしたが、1939年4月には職業学校規程に基づく実業学校として文部省から認められ、「鳳来寺高等家政女学校」と改称されました。

太平洋戦争中の1943年2月、愛知県への移管が決定。1944年4月には「愛知県立鳳来寺女子農学校」として新たなスタートを切りました。旧校である鳳来寺高等家政女学校は、4年生が卒業まで在籍し、1945年3月に廃止されました。

戦後の学制改革を経て、1948年4月には新制高等学校「愛知県立鳳来寺高等学校」となります。この際、総合制高等学校として普通課程、家庭課程、農業課程、別科が設置され、男女共学制も導入されましたが、初年度に男子生徒の入学はありませんでした。

同年10月、一時的に愛知県立新城高等学校の分校となりましたが、わずか半年後の1949年4月には再び独立。「愛知県立鳳来寺高等学校」として再開校しました。この時導入された小学区制を機に、初めて男子生徒が入学しました。

学科の変遷

開校当初は各種学校、実業学校（家政女学校）として女子教育を行っていましたが、新制高等学校移行後は総合制が導入され、普通課程、家庭課程、農業課程、別科が設けられました。

1950年3月：農業課程を廃止。
1956年3月：高校進学率の上昇に伴い、別科を廃止。
以降、普通科と家庭科系の体制が続きます。家庭科は後に家政科、生活情報科と名称を変更。
2002年：生活情報科を廃止。これにより、閉校まで普通科のみとなりました。

地域との関わりと通学

本校は東三河地域全域から生徒を受け入れていました。通学手段としては、JR飯田線本長篠駅から豊鉄バスを利用する方法が一般的でした。かつて1968年まで運行されていた豊橋鉄道田口線の鳳来寺駅が学校の近くにあり、多くの生徒が利用していましたが、廃止後はバスやスクールバスが主要な通学手段となりました。

地域との連携を象徴する活動として、鳳来寺の参道を清掃するボランティア活動が長年続けられました。開校当初から行われ、特に1980年代以降は春と秋の年2回実施が慣例となりました。生徒数の減少に伴い清掃範囲は縮小されましたが、閉校後も新城高等学校に引き継がれています。

校歌は、愛知県立鳳来寺高等学校として1952年1月に制定されたもの（作詞：丸山薫、作曲：大村能章）が使用されました。これは男女共学化などの実情に合わせて新たに作られたものです。

閉校、そしてその後

愛知県の県立高等学校再編計画に基づき、2009年度より生徒募集を停止。在籍生徒が卒業を迎えた後、2011年3月31日をもって閉校しました。閉校後の卒業証明書などの事務手続きは、当初愛知県立新城高等学校が引き継ぎましたが、同校の閉校に伴い、現在は統合先の愛知県立新城有教館高等学校へ引き継がれています。

学校の跡地は、閉校後も活用が進んでいます。テレビドラマのロケ地として利用されたり、校舎と校庭を活かした自転車レースが開催されるなど、地域の活動の場としても利用されています。

鳳来寺高等学校は、地域社会の発展や女子教育の推進に貢献し、多くの卒業生を送り出してその歴史に幕を閉じました。

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