慈照寺 (瑞浪市)

恵日山慈照寺

概要

慈照寺は、岐阜県瑞浪市日吉町宿洞にある曹洞宗の寺院です。山号を恵日山と称します。古くは日之宮の神宮寺、または酒波神社の別当寺であったとも伝えられていますが、詳細な歴史は不明な点が多いとされています。

歴史

開創の伝承

寺伝によれば、天慶2年（939年）に関東で反乱を起こし敗れた平将門の子（または弟）である定丸が、信濃の山奥に隠れ住んでいました。その後、彼は平将門一族の菩提を弔うために修行を積み、僧侶となり慈照と名乗ります。慈照は、この地で榎木のもとで37日間読経を続けたと伝えられています。

ある日の日の出前、丑寅の方角にある大杉の根元が輝いているのを見た慈照は、そこから大型の巻貝ビカリアの化石（日の玉）を発見します。この化石を安置し、日の宮を建立したのが、慈照寺の始まりとされています。その後、奥之院として榎木山慈照寺を開創したと伝えられています。

本尊は十一面観世音菩薩で、高山の廃寺から迎えられたものです。

江戸時代

寛文7年（1667年）、本寺・末寺の改めによって、増福寺と同様に、寺・村役人・檀家も承諾し、開元院を本寺として末寺帳を作成することに同意しました。開元院十二世の嶺外秀存を勧請開山として迎え、別山芳傳が中興となり、榎木山から恵日山に改号しました。

元禄元年（1688年）以降は、開元院の客末寺となり、現在に至っています。元禄の本末制度によって、諸役御免・小使役不割当を条件に、それまで別の門派であった開元院の末寺となることを承知したとされています。

近現代

昭和39年（1964年）には原因不明の火災により全焼してしまいましたが、その後再建され、山門、梵鐘、鐘楼堂も新たに建立されました。

化石を御神体とする例は全国各地に見られますが、慈照寺では、かつて日霊縁起による日の宮の御神体として保管されていた大型巻貝の化石が、火災で焼失しました。しかし現在も、別の巻貝の化石を寺宝として大切に保管しています。

境内

廻国塔

天明年間（1781年～1789年）頃に建立されたと推定される廻国塔があります。光背型の十一面観音石像で、光背部には「奉納大乗妙典六十六部日本廻国」と刻まれていますが、廻国者の名前は刻まれていません。

善光寺如来三尊碑

明治15年（1882年）に建立された、善光寺阿弥陀如来の文字碑です。

百万遍念仏碑

「明治三十八年」とだけ刻まれた百万遍念仏碑があり、ここで大勤行が行われていたことが分かります。

日の玉縁起

寺には、日の玉にまつわる縁起が伝えられています。三野国津田の庄青葉の里、日吉日天宮の由来を記したもので、天地開闢の昔からこの地に気が集まり、東国から西国まで晴れ渡ったとされています。その際、三野国の中央から靄が東西に晴れ渡り、近州の水海や駿州の富士が一時に見えたと伝えられています。また、この地はかつて海で、美しい魚類や貝類が多く、日神や月神の食物であったとされています。

その後、陸地となり、木々が生い茂る深山幽谷となりました。この地は陰陽和合の正中であり、天災も少なく、豊作が続いたとされています。桓武天皇五代鎮守府将軍良将の嫡子、相馬の小次郎将門の弟である定丸が、将門の乱後、この地で修行し、慈照禅師と名乗ったという話が記されています。

慈照禅師が、榎の宿で里人に尋ねたところ、誰も知る者がいなかったため、毎朝榎の木の下で読経を続けました。ある日、日の出前に、丑寅の方角の大杉の尾まで日光が輝いているのを見つけ、そこを訪ねると、12曲がりの霊形の貝石（日の玉）を発見しました。慈照禅師はこの貝石を安置し、寺を建立したとされています。この寺は霊験あらたかで、近隣から多くの参拝者が訪れるようになったと伝えられています。この地は陰陽が順する場所であり、たとえ不作の年でも、大きな被害はなかったとされています。特に、陰陽のバランスが悪い場所から訪れる人々が信仰すると、効果があるとされています。

天津日神社

慈照寺の近くには天津日神社があります。この神社は平安時代に「萬世（よろずよ）をとぎ澄み神の日之御霊ここより永世の明り立つらん」と詠まれた日之宮であるとされ、慈照寺は、その「日のおさがり」を探し当てた平将門の子が建立した寺だと伝えられています。

参考文献

『瑞浪市史　歴史編』　第六編　近世　第五章　文化と信仰(文化宗教史)　第二節　神社と信仰　ニ　市内の近世寺院　市内の各寺院　p1036～p1037　瑞浪市　昭和49年(1974年)
『ふるさとの歴史 : 郷土学習のための各町概史 (瑞浪市郷土史シリーズ ; その1)』日吉町概史　一、日吉郷　近世　宿洞村　p138～p140　渡辺俊典　瑞浪市郷土史研究会　1983年

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