慶應義塾大学亜細亜研究所

慶應義塾大学亜細亜研究所は、1943年7月に慶應義塾大学によって設立された研究所です。当時、国家戦略としてアジア研究の必要性が高まっていた情勢下で、その設立が決定されました。

研究所の施設は、現在の慶應義塾女子高等学校の敷地にあった綱町研究所（旧徳川達孝伯爵邸）が使用されました。また、運営資金として、藤山愛一郎氏などからの寄付金約200万円に加え、慶應義塾が1944年に開始した資金募集によって年間20万円の研究拡充費が支給されることになっていました。

所長には小泉信三氏が、副所長には常任理事が就任しました。顧問や参与には、川合貞一氏、林毅陸氏、北島多一氏、板倉卓造氏、高橋誠一郎氏、野村兼太郎氏、西脇順三郎氏といった著名な人物が名を連ねました。

研究所では、研究と教育を担う所員および研究調査を行う研究員の多くが、慶應義塾の教員と兼任していました。研究部門は文化部（思想、文化政策、言語、土俗など）、民族部（民族運動、民族政策など）、法政部（法制、外交、植民地行政など）、経済部、資源部、厚生部（医事、衛生、福利施設など）に分かれ、個別研究に加えて共同研究も積極的に進めることを目指しました。さらに、学部および高等部から募集した研究生を対象に、教育・研究指導も行っていました。

研究所は、学徒出陣や思想統制といった戦時下の厳しい状況において、研究教育の機能を維持する重要な役割を果たしました。しかし、1945年5月の空襲によって施設の大半が焼失し、1946年3月に廃止されることとなりました。研究所の活動成果として、機関紙『亜細亜研究』全12号と『亜細亜業書』2冊が刊行されています。

関連事項

支那語科
慶應義塾大学東アジア研究所
市河三喜

参考文献

[慶應義塾]]史事典編集委員会編『慶應義塾史事典』慶應義塾大学出版会、2008年11月。ISBN 978-4-7664-1572-8。 [http://www.keio-up.co.jp/np/isbn/9784766415728/。

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