慶應義塾大学先端生命科学研究所

慶應義塾大学先端生命科学研究所について

慶應義塾大学先端生命科学研究所（IAB）は、慶應義塾大学の附置研究所として、山形県鶴岡市に設置されています。この研究所は、バイオテクノロジーを駆使し、生体や微生物の細胞活動を網羅的に計測・分析し、そのデータをコンピュータで解析・シミュレーションすることで、医療、環境、食品などの分野への応用を目指す、最先端のバイオテクノロジー研究機関です。

研究の概要

慶應義塾大学は、この研究所を「アカデミックベンチャー」と位置づけており、失敗を恐れずに未知の領域へ積極的に挑戦し、新規先端技術の開発を推進しています。細胞工学、分析化学、代謝工学、分子遺伝学、ゲノム工学、情報科学といった多様な分野の研究者たちが集結し、ITを駆使した「統合システムバイオロジー」という新しい分野を開拓しています。

この研究所から生まれた技術をもとに、多くのベンチャー企業が誕生しています。例えば、血液検査でうつ病を診断する技術を持つヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ、人工蜘蛛糸を開発するスパイバー、唾液検査でがんなどを早期発見する技術の実用化を目指すサリバテック、腸内環境を評価するメタジェン、移植用心臓組織を製造・販売するメトセラなどが挙げられます。

また、第一生命保険との包括連携協定により、健康寿命を延ばすための研究協力や、メトセラへの投資も行われています。国立がん研究センターとの連携では、鶴岡市の先端研究産業支援センターに「がんメタボロミクス研究室」が開設され、博報堂DYホールディングスとの連携も進められています。

研究プロジェクト

研究所の研究は、大きく基盤技術部門と応用技術部門に分かれています。

基盤技術部門

最新の網羅的な解析方法を用いて、生命現象を包括的に理解することを目指しています。

Genomics（ゲノミクス）: 遺伝子情報の解析
Transcriptomics（トランスクリプトミクス）: RNA情報の解析
Proteomics（プロテオミクス）: タンパク質情報の解析
Metabolomics（メタボロミクス）: 代謝物質情報の解析
Bioinformatics（バイオインフォマティクス）: 生物情報学

応用技術部門

人類が直面する問題の解決や地域産業の活性化に貢献することを目指しています。

医療バイオ: がん医療や鶴岡みらいコホートプロジェクトなど
環境バイオ: オイル産生藻や環境微生物の研究
食品バイオ: 食品のメタボローム解析や地域農産物の機能性成分の探索

メタボロームシンポジウム

2006年から毎年開催されている「メタボロームシンポジウム」は、メタボロミクスの最新技術や応用について発表・議論する場を提供しています。このシンポジウムは、山形県、鶴岡市、そして関連企業の後援のもと、研究所が主催しており、メタボローム解析技術の普及と実用化を目指しています。

サイエンスパーク

鶴岡市が整備を進めるサイエンスパークは、研究所のバイオラボ棟や鶴岡メタボロームキャンパス、スパイバー本社などが集まるエリアです。このサイエンスパークには、全天候型の児童遊戯施設「キッズドーム ソライ」と宿泊滞在複合施設「ショウナイホテル スイデンテラス」も併設されており、地域の人々の交流拠点としても機能しています。

関連情報

当研究所の研究分野に関連する用語や企業は以下の通りです。

メタボローム: 生体内代謝物質の網羅的な解析
産官学連携: 産業界、官公庁、大学の連携
ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ: うつ病診断技術を持つ企業
スパイバー: 人工蜘蛛糸を開発する企業
東北公益文科大学: 地域連携を行う大学

また、研究所の設立に尽力した人物として、初代鶴岡市長の富塚陽一氏、地域経済活性化に取り組む2代目鶴岡市長の榎本政規氏、研究者の曽我朋義氏、冨田勝氏などが挙げられます。

外部リンク

慶應義塾大学先端生命科学研究所
慶應義塾大学鶴岡タウンキャンパス
第10回メタボロームシンポジウム
* 慶應義塾大学先端生命科学研究所　からだ館


この研究所は、最先端の研究を通じて、医療、環境、食品といった多岐にわたる分野でのイノベーションを牽引し、地域社会の活性化にも大きく貢献しています。

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