慶遠府

慶遠府は、中国の歴史において、宋代から民国初期にかけて存在した行政区画です。現在の広西チワン族自治区河池市東部に位置していました。その変遷は、南宋時代に宜州が昇格して慶遠府となったことに始まります。

南宋時代の慶遠府

1265年（咸淳元年）、南宋により宜州が慶遠府に昇格しました。この時、慶遠府は広南西路に属し、宜山、天河、忻城、思恩、河池の5県と、温泉州、環州、鎮寧州、蕃州、金城州、文州、蘭州、安化州、昆州、智州の10の羈縻州、そして懐遠軍と富仁・富安の2監を管轄していました。この時代、慶遠府は広大な地域を統治する重要な拠点でした。

元代の変遷

1276年（至元13年）、元朝によって慶遠府は慶遠安撫司と改められました。さらに、1279年（至元16年）には慶遠路総管府と改称され、行政組織の再編が進められました。1297年（大徳元年）には、慶遠路総管府は慶遠南丹渓洞等処軍民安撫司と改められ、湖広等処行中書省に属するようになりました。この時、管轄地域は宜山、天河、忻城、思恩、河池の5県となりました。元代には、慶遠府は安撫司や路総管府といった形で、行政組織の変動を経験しました。

明代の復活と清代

1368年（洪武元年）、明朝が成立すると、慶遠南丹渓洞等処軍民安撫司は再び慶遠府となりました。しかし、翌年の1369年（洪武2年）には慶遠南丹軍民安撫司と改められました。その後、1370年（洪武3年）には再び慶遠府の名称に戻されました。この時期、慶遠府は広西省に属し、直轄の宜山、天河、忻城の3県と、河池州に属する思恩、茘波の2県、そして南丹州、東蘭州、那地州、永順長官司、永定長官司、永安長官司の合わせて4州5県3長官司を管轄しました。清代に入ると、慶遠府は広西省に属し、宜山県、天河県、思恩県、安化庁、河池州、東蘭州、南丹土州、那地土州、東蘭土州、忻城土県、永定長官司、永順正長官司、永順副長官司の1庁2州3県3土州1土県3長官司を管轄していました。清代には、土司制度の影響が見られ、土州や土県が行政区画に組み込まれていました。

中華民国による廃止

1913年、中華民国が成立すると、慶遠府は廃止され、その歴史に幕を閉じました。慶遠府は、約650年にわたり、中国の地方行政において重要な役割を果たし、時代とともにその姿を変えながらも、地域社会に深く根付いていました。

慶遠府の変遷は、中国の地方行政制度の歴史を理解する上で重要な事例であり、各時代の政治体制や社会構造の変化を反映しています。その存在は、今日の広西チワン族自治区の歴史を語る上で欠かせない要素の一つです。

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