咸淳

咸淳(かんじゅん) - 南宋の動乱期を彩る元号

咸淳は、南宋の第9代皇帝である度宗の治世において使用された元号です。1265年から1274年までの10年間、南宋は咸淳という元号の下、モンゴル帝国による圧迫と国内の混乱という困難な時代を過ごしました。この記事では、咸淳年間における主要な出来事を通して、当時の南宋の状況を詳しく見ていきます。

度宗の即位と咸淳元年の始まり

景定5年12月1日、度宗が即位し、翌年を咸淳元年とする踰年改元が布告されました。これは、新しい時代への期待と、同時に重くのしかかるモンゴルの脅威への対応を象徴する出来事と言えるでしょう。咸淳元年に入ると、賈似道が太師の位に加えられ、史弥遠が「政策元勲」として追叙されるなど、政治的な動きが活発化しました。また、財政の安定化を図るため、銭法の厳格化や民間における牌帖の使用禁止令が出されました。しかし、同年8月には廬州と安慶がモンゴル軍の侵攻を受け、南宋の防衛線の脆弱さが露呈しました。

モンゴルの侵攻と襄陽・樊城の戦い

咸淳3年には、モンゴル軍が襄陽に侵入し略奪を行いました。これは、本格的な侵攻の前触れであり、南宋の危機感を高める出来事となりました。そして咸淳4年9月9日、襄陽・樊城へのモンゴル軍の包囲が始まりました。この襄陽・樊城の戦いは、南宋存亡をかけた重要な戦いとなり、長期間にわたる攻防戦が繰り広げられました。

軍事・政治改革と南宋の抵抗

南宋朝廷は、モンゴルの侵攻に対抗するため、様々な対策を講じました。咸淳4年には浙西の公田荘が廃止され、咸淳5年には公田に役人を配置して租税の監督を強化するなど、財政・軍事面での改革が行われました。また、咸淳6年には成天暦が施行され、郡県には推排法が施行されるなど、行政面での改革も進められました。襄陽・樊城の救援のため、范文虎が派遣されるなど、必死の抵抗が続けられました。しかし、咸淳7年にはモンゴル軍が四川と淮西に侵攻し、范文虎の救援軍は敗退。同年、モンゴルは国号を「大元」と改めました。南宋の危機は、ますます深刻さを増していきました。

襄陽・樊城陥落と南宋滅亡への序章

咸淳9年、ついに樊城が陥落。続く2月27日には襄陽も陥落し、南宋の対モンゴル防衛線は事実上崩壊しました。これは南宋にとって壊滅的な打撃となり、滅亡への道を決定づける出来事となりました。

度宗の崩御と咸淳の終焉

咸淳10年7月9日、度宗が崩御しました。そして10月22日、恭帝が即位し、翌年から「徳祐」への踰年改元が布告されました。咸淳という元号は、ここにその幕を閉じました。咸淳年間は、南宋がモンゴル帝国の圧力の下で苦闘し、最終的に滅亡への道を歩み始めた時代でした。この10年間の出来事は、中国の歴史において重要な転換点であり、その後の元代の成立へと繋がっていったのです。

もう一度検索