憲法はまだか

『憲法はまだか』

『憲法はまだか』は、1996年にNHKによって放送されたテレビドラマで、日本国憲法の制定50周年を記念した作品です。このドラマは、日本国憲法がどのようにして生まれたのかという背景や、それに携わった政治家やGHQ民政局、憲法学者たちの複雑な駆け引きを描写しています。視覚的にも印象的な演出が施され、特に全身包帯で巻かれた「産まれつつある憲法の象徴」としてのキャラクターの存在は、単なる歴史ドラマの枠を超えたセンセーショナルな演出として注目を集めました。

企画の背景

このドラマの企画は、1995年9月に公開された「衆議院帝国憲法改正案委員小委員会」の秘密議事録に触発されて始まりました。この特筆すべき情報が50年ぶりに明らかになったことで、NHKはその内容をもとにドラマの製作を計画し、日本国憲法制定のプロセスを通じて党派を超えて再建を目指す人々の物語を描くことを目指しました。プロデューサーの金沢宏次は、この試みにおいてドラマティックなかかわり合いを再現することを重視し、その脚本には、戦後日本の在り方を問い続ける作家、ジェームス三木が起用されました。

第一部と第二部

ドラマは二部構成になっており、第一部のタイトルは「象徴天皇」です。この部分では、憲法問題担当大臣である松本烝治（演：津川雅彦）と公爵・近衛文麿（演：江守徹）の確執を中心に、総理の幣原喜重郎（演：神山繁）や外相の吉田茂（演：鈴木瑞穂）などの登場人物の動きが展開されます。第二部は「戦争放棄」と呼ばれ、松本委員会が極秘に作成した憲法草案について毎日新聞がスクープしたエピソードを描写します。この背後では、GHQが憲法草案をまとめる過程における日本政府とのやり取りが描かれ、その翻訳や修正、解釈に関する緊張感のある応酬が再現されました。

制作の工夫

NHK製作スタッフは、実在の人物を演じる難しさに直面し、約200人に達する配役の選定に一ヶ月を費やしました。登場人物の服装やメーキャップに至るまで、歴史的事象の再現に向けた工夫が成されています。放送は、土曜ドラマ枠で行われ、第一部が1996年11月30日、第二部が12月7日に放映されました。

脚本とその後

脚本担当のジェームス三木は、このドラマの執筆を終えた後に、GHQの動きに焦点を当てた演劇を構想し、作品『真珠の首飾り』として初演を果たしました。この戯曲では、GHQ憲法草案制定に関与したベアテ・シロタ・ゴードンにスポットを当て、様々な地域での巡演が続いています。さらに、ジェームス三木は本ドラマと同名の長編小説『憲法はまだか』を2002年に出版し、作品の一層の発展を遂げました。

まとめ

『憲法はまだか』は、そのユニークな演出と深い歴史的分析により、視聴者に一時代を超えた日本の成り立ちと憲法制定の重みを考えさせる作品となりました。放送文化基金賞の優秀賞を受賞するなど、その功績は評価されています。

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