懇願 (ティツィアーノ)

『懇願』（こんがん、伊: L'appello , 英: The Appeal）は、16世紀初頭のヴェネツィアで活躍した巨匠、ティツィアーノ・ヴェチェッリオが1510年頃に制作した油彩画です。ただし、この作品はティツィアーノ単独によるものではなく、ジョルジョーネおよびセバスティアーノ・デル・ピオンボとの合作である可能性が指摘されています。現在、本作はアメリカ合衆国ミシガン州デトロイトのデトロイト美術館に所蔵されています。

作品の詳細

画面には、暗い背景を前に、2人の女性と1人の男性が半身像で描かれています。3人はそれぞれ異なるポーズを取り、左側の女性は横顔で、右側の女性はほぼ横顔、そして中央の男性は四分の三正面を向いています。左側の女性は、右手を右側の女性の胸に当てており、まるで彼女を制止したり、慰めたりしているかのようです。その右手の薬指には指輪がはめられています。中央の男性は毛皮の上着と帽子を着用しており、帽子には「CHA」というモノグラムが確認できます。このモノグラムを根拠に、3人の人物像に対する様々な寓意的な解釈がなされてきました。

一部の研究者は、画面左の女性をティツィアーノ、中央の男性をジョルジョーネ、そして右側の女性をセバスティアーノ・デル・ピオンボが描いたと提唱しています。これは、この作品が3人の画家による合作である可能性を示唆しています。

帰属について

作品の裏側には、セバスティアーノ・デル・ピオンボ、ジョルジョーネ、ティツィアーノの名前が記された碑文があります。この碑文は、本作がジョルジョーネによって着手され、彼の死後、彼の弟子であるティツィアーノとセバスティアーノ・デル・ピオンボによって完成されたことを示唆していると考えられています。しかし、パルマ・イル・ヴェッキオやジョヴァンニ・カリアーニも制作者として名前が挙げられており、特に後者は19世紀後半から20世紀初頭にかけて有力な説として支持されていました。一方で、この作品を16世紀初頭のヴェネツィア派の影響を受けた画家による後期の模倣作と考える研究者も存在します。

2008年に開催されたセバスティアーノ・デル・ピオンボ展では、この作品は3人の合作として展示されました。しかし、依然として帰属については議論が続いています。

主題の解釈

絵画の主題については、現在も様々な説があり、明確には解明されていません。男性の帽子のモノグラム「CHA」が、解釈の手がかりとなる可能性が指摘されています。美術史家アブラハム・ブレディウスとフレデリック・シュミット＝デゲナーは、この3人の人物像を悪徳と美徳の間のヘラクレスと解釈しました。一方、パウル・シュブリングは、クレウサとメディアの間のイアソンと捉えました。また、ウィルヘルム・スイダは、慈善（Charitas）、人間性（Humanitas）、愛（Amor）の寓意と解釈し、ピエトロ・マリア・バルディは、愛（Amor）、結婚（Concordia）、名誉（Honor）の擬人化と考えました。さらに、ポール・ホルバートンは、中央の男性を巡礼者と見なしています。

来歴

絵画は、もともとベルガモのザンキ宮殿に所蔵されていたと考えられています。その後、17世紀にはアムステルダムの商人ニコライ・ソヒエのコレクションに加わり、その後、オラニエ公ウィレム3世の手に渡りました。ウィレム3世の死後、1713年にヘット・ロー宮殿で競売にかけられ、1719年にはマインツ選帝侯ロタール・フランツ・フォン・シェーンボルン伯爵が取得しました。1867年、パリでの競売において、21,500フランでオルデンブルク大公フリードリヒ・アウグストが購入しました。1926年に大公が売却し、同年、デトロイト美術館がこの作品を購入しました。

複製

本作には複数の複製が存在することが知られています。中でもヴェネツィアのアカデミア美術館が所蔵している17世紀の複製は、オリジナルに非常に忠実であると評価されています。

ギャラリー

(このセクションには、実際の画像の詳細な説明が入りますが、ここでは省略します)

脚注

(このセクションは省略します)

参考文献

Francesco Valcanover, L'opera completa di Tiziano, Rizzoli, Milano 1969.
Alessandra Fregolent, Giorgione, Electa, Milano 2001. ISBN 88-8310-184-7

外部リンク

* デトロイト美術館公式サイト, ティツィアーノ・ヴェチェッリオ『懇願』

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