懿安郭皇后

懿安皇后：唐朝を支えた貴妃の生涯

懿安皇后（いあんこうごう、? - 848年）は、唐の憲宗の貴妃であり、穆宗の生母として知られています。さらに、敬宗、文宗、武宗の祖母という立場にもありました。彼女は郭氏といい、その家柄は非常に高貴でした。祖父は安史の乱で多大な功績を挙げた郭子儀であり、父は郭曖、母は代宗の娘である昇平公主でした。穆宗の時代には皇太后、敬宗、文宗、武宗、宣宗の時代には太皇太后として、その存在感を示しました。

生い立ちと結婚

懿安皇后は、国公である父と公主である母を持つ、非常に恵まれた環境で育ちました。貞元9年（793年）には、広陵郡王であった李純（後の憲宗）の正妃となります。貞元11年（795年）には、後の穆宗となる李宥を産みました。その他、絳王李寮と岐阳庄淑公主も産んでいます。

貴妃として

元和元年（806年）、憲宗が帝位に即くと、郭氏は貴妃に冊立されました。群臣からは、郭貴妃を皇后に立てるべきだという意見が出ましたが、憲宗には他に寵愛する妃がいました。また、かつての武則天、韋皇后、張皇后による専横があったため、中唐期以降は皇帝の在位中に立后する例がほとんどありませんでした。そのため、憲宗は郭氏の立后を却下しました。また、憲宗は長男の李寧（紀美人所生）を皇太子としましたが、李寧が早世したため、代わりに李宥が皇太子となりました。

皇太后、そして太皇太后へ

元和15年（820年）、子の穆宗が即位すると、郭氏は皇太后となりました。穆宗の崩御後、孫の敬宗が即位すると、太皇太后となりました。武宗の治世には、敬宗の母である義安皇太后、文宗の母である積慶皇太后と共に尊崇され、「三宮太后」と呼ばれました。

晩年と死

会昌6年（846年）、武宗が崩御した後、宦官によって皇帝に擁立されたのは、憲宗の十三男で武宗の従叔父にあたる光王李忱（宣宗）でした。直系の穆宗、敬宗、文宗、武宗は郭氏を丁重に扱っていましたが、傍系の出身である宣宗は郭氏の扱いが粗略であったと言われています。太皇太后郭氏と、宣宗の母である皇太后鄭氏（孝明太后）は仲が悪かったためだと言われています。太皇太后は、その境遇を悲観して飛び降り自殺を図ろうとしたとも伝えられています。その夜、太皇太后は急死し、宣宗によって殺害されたという噂も流れました。太皇太后は、景陵（憲宗の陵）の外園に簡素に葬られましたが、宣宗の子である懿宗の即位後、ようやく憲宗と合葬されました。

中国の歴史上、自身の息子が帝位に就き、皇太子妃から太皇太后となった例は、郭氏を含めてもごくわずかです。ただし、郭氏は皇后位を経ずに太皇太后となっています。

伝記資料

『旧唐書』巻52
『新唐書』巻77

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