懿徳天皇

懿徳天皇

懿徳天皇（いとくてんのう）は、日本の第4代天皇で、欠史八代の一人に数えられています。在位は『日本書紀』によると、元年2月4日から34年9月8日までとされています。この天皇の事績については、史料が乏しく不明な点が多く、実在性についても議論が続いています。

生涯

懿徳天皇は、安寧天皇の第二皇子として誕生しました。母は渟名底仲媛命で、兄弟には息石耳命と磯城津彦命がいます。父帝の崩御の翌年に即位し、都を軽之境岡宮に移しました。皇后には息石耳命の娘である天豊津媛命を迎え、後の孝昭天皇となる観松彦香殖稲尊をもうけました。崩御後、畝傍山南繊沙渓上陵に葬られました。

名

『日本書紀』では大日本彦耜友天皇、『古事記』では大倭日子鉏友命と記されています。漢風諡号である「懿徳」は、8世紀後半に淡海三船によって撰進されたとされています。

事績

『日本書紀』や『古事記』には、懿徳天皇の事績はほとんど記載されていません。そのため、欠史八代の一人とされています。しかし、『先代旧事本紀』には、食国政申大夫の出雲色命を大臣としたという記述が残っています。

系譜

后妃・皇子女

皇后：天豊津媛命（あまとよつひめのみこと）
息石耳命の娘で、懿徳天皇の姪にあたります。
『日本書紀』には泉媛、飯日媛とする異説もあります。『古事記』では賦登麻和訶比売命（ふとまわかひめのみこと）とされています。
皇子：観松彦香殖稲尊（みまつひこかえしねのみこと）
後の孝昭天皇です。
皇子：武石彦奇友背命（たけしひこくしともせのみこと）
血沼之別・多遅摩之竹別・葦井之稲置らの祖とされています。

年譜

綏靖天皇29年：誕生
安寧天皇11年：16歳で立太子
懿徳天皇元年：即位
懿徳天皇2年：軽曲峡宮に遷都、天豊津媛命を立后
懿徳天皇22年：観松彦香殖稲尊を立太子
懿徳天皇34年：崩御。77歳（『古事記』では45歳）
懿徳天皇34年の翌年：畝傍山南繊沙渓上陵に葬られる

宮・陵

宮：軽曲峡宮（かるのまがりおのみや）、または軽之境岡宮（かるのさかいおかのみや）
現在の奈良県橿原市大軽町周辺が伝承地です。
陵：畝傍山南繊沙渓上陵（うねびやまのみなみのまなごのたにのえのみささぎ）
現在の奈良県橿原市西池尻町にある俗称「マナゴ山」に治定されています。

地方の伝承

各地に懿徳天皇にまつわる伝承が残されています。

籠神社：丹後国一宮籠神社では、懿徳天皇4年に始まったとされる葵大祭が行われています。
野坂神社：越前国延喜式内社野坂神社には、懿徳天皇23年に大神が勧請されたという伝承があります。
佐久神社：甲斐国八代郡式内社佐久神社には、向山土木毘古王が懿徳天皇4年に薨去したという社伝が残っています。

考証

実在性

懿徳天皇を含む欠史八代の天皇は、事績の記録が少なく、実在性については様々な議論があります。治世の長さが不自然であることや、宮・陵の所在地が古墳の分布と一致しないことなどから、創作性が強いという説があります。一方で、宮号の原典の存在や、系譜に磯城県主との関わりが見られることなどから、全てを虚構とするには否定的な見解もあります。また、治世の長さについては、春秋二倍暦説で説明できるとする説もあります。

名称

和風諡号である「おおやまとひこ-すきとも」のうち、「すきとも」は鋤の神に由来するという説があります。

伝承

中世の『古今和歌集序聞書三流抄』には、懿徳天皇が出雲に行幸し、素戔嗚尊と出会うという逸話が残されています。

参考文献

『国史大辞典』吉川弘文館
『日本古代氏族人名辞典 普及版』吉川弘文館

関連項目

欠史八代
* 少帝懿

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