戊辰丸

戊辰丸の歴史

戊辰丸（ぼしんまる）は、徳島藩が所有していた蒸気船で、幕末から明治にかけて重要な役割を果たしました。この船は、慶応4年8月にイギリスのグラバー商会を利用して購入されました。価格は98600両で、もともとの名前は「ヒリピノ Filipino」です。この蒸気船は1866年にスコットランドのグラスゴーで建造されており、全長195尺（約59.4メートル）、幅26尺（約7.9メートル）、深さ14尺（約4.2メートル）で、総トン数は518.81トンを誇ります。また、機関出力は120馬力でした。

その後、戊辰丸は明治元年1月に125,000ドルで再購入され、鉄製の船体となり、約70メートルの全長を持ち、450トンの積載量を有しました。このように、戊辰丸は徳島藩の重要な船舶でありました。

明治2年の2月3日、戊辰丸は徳島を出発し、東京へ向かう航海を行いました。これをきっかけに、政府に徴用され、戊辰戦争に参加します。戊辰戦争においては、宮古湾海戦に重要な役割を果たしました。3月9日には、「甲鉄」を含む8隻の艦隊が品川を出発し、数日後に宮古湾にたどり着きました。

そして、蝦夷共和国側は「甲鉄」の奪取を狙いましたが、実際の襲撃は「回天」という艦1隻の単独行動となりました。3月25日、「回天」は「甲鉄」を攻撃しましたが、奪取には失敗し、同時に「戊辰丸」も攻撃を受けて損傷を受け、東京へ引き返すこととなりました。この戦闘では、戊辰丸の乗員のうち14名が行方不明となり、3名が負傷したという惨事が起こりました。

戊辰丸は明治2年9月28日に徴用解除され、徳島へ戻ります。その後は商船として活動し、藍玉の輸送などに従事しました。明治3年までに、徳島と東京の間で4往復半の航海を行い、東京行きでは藍玉約6268本や旅客31人を、徳島行きでは正金12900両や金札7700両、旅客38人などを運搬しました。

廃藩置県後、戊辰丸は蜂須賀家に所有権が移りました。明治5年10月には、商法方政策御用掛商人である井上三千太に3万両で売却され、船名は「鵬翔丸」と改名されます。さらに西南戦争の際には、この船も徴集されました。

最期を迎えるのは、明治14年11月21日のことで、陸奥国三戸郡鮫村湾で悪天候により難破しました。

このように、戊辰丸はその時代において、単なる商船だけでなく、戦争においても活躍した多様な歴史を持つ船舶なのでした。

もう一度検索