宮古湾

宮古湾について

宮古湾は、岩手県中部の東側に位置する湾で、太平洋に面しています。リアス式海岸の三陸海岸にあり、南西から北東に細長く伸びた形をしています。環境省の定義では、湾口は重茂半島の閉伊崎と姉ヶ崎を結ぶ線で、幅約4.8km、面積は約24km²です。一方、『ブリタニカ国際大百科事典』では、閉伊崎と臼木半島の館ヶ崎を結ぶ線としており、湾口は約4kmとされています。湾の奥行きは約10kmで、最奥部には津軽石川が、中央西側には閉伊川が流れ込んでいます。湾内の水深は20mから60mで、最大水深は約76mです。海底は湾奥部が砂地で、その他は泥質です。

地勢

宮古湾の西岸には宮古市の市街地が広がり、閉伊川の河口には宮古港があります。臼木半島には、美しい景勝地として知られる浄土ヶ浜があります。東岸は急峻な山地で、長さ12kmにも及ぶ断層が見られます。宮古湾は複雑な地形と多様な環境が共存する場所です。

利用

宮古湾は、水質が良好で、化学的酸素要求量(COD)は概ね1mg/lと、海域A類型の環境基準値をクリアしています。このため、水産業が盛んで、多様な魚介類が生息しています。特に、黒潮と親潮がぶつかる潮目にあたるため、好漁場となっています。夏季には海霧が発生しやすいですが、豊富な栄養分によって海藻類や貝類が豊富で、養殖漁業にも適しています。

水産業

宮古湾の湾岸は藻場に富み、アマモ場やガラモ場が発達しています。宮古港では、特にサケの水揚げが多く、本州内では1位を誇ります。また、タラの水揚げも全国1位です。養殖業では、ワカメ、コンブ、ノリ、ホタテ、カキなどが養殖されています。アワビは水揚げ量では全国10位程度ですが、卸売価格では全国2位です。その他、ニシン、クロソイ、ヒラメ、ホシガレイなどの稚魚の栽培漁業も行われています。

宮古港

宮古港は、国内に102ヶ所指定されている重要港湾の一つで、江戸時代に開港して以来、三陸地方有数の物流拠点として発展してきました。鉱工業や木材工業の隆盛により、貨物の取扱量が増加し、港湾整備が進められてきました。近年では、横浜港との内航フィーダー船の定期航路が開設され、盛岡市と宮古港を結ぶ道路整備も進められています。

その他の漁港

宮古湾内には、津軽石漁港、蛸の浜漁港、日出島漁港、白浜漁港、浦の沢漁港など、多くの漁港があります。これらの漁港は、地域の水産業を支える重要な役割を担っています。

レジャー

夏季には、宮古湾でカッターボートやシーカヤックのレース大会が開催されたり、「宮古湾ボート天国」と呼ばれるマリンスポーツのイベントが開催されるなど、レジャーの場としても利用されています。

歴史

宮古湾周辺には、古くから人の定住があったことを示す遺跡が分布しています。鎌倉時代以降、閉伊氏がこの地を支配し、戦国時代には南部氏がこの地域を征しました。1611年の慶長三陸地震では、沿岸一帯で深刻な被害が発生しましたが、南部利直によって宮古に代官所が拓かれ、1615年には藩港と定められました。宮古ではこの年を開港年としており、2015年には開港400年祭が開催されました。

江戸時代

江戸時代には、宮古湾で水揚げされた様々な魚介類や、加工品が交易品として出荷され、アワビやナマコの乾物は、長崎俵物として清国に輸出されました。これらの輸送を担う廻船問屋によって、宮古の町は栄えました。

幕末

幕末期には、外国船の接近に備えて湾岸に台場が整備されました。戊辰戦争では、宮古湾海戦が起こり、旧幕府軍と新政府軍の間で海戦が行われました。

明治時代以降

明治時代以降は、河口付近の埋め立てが進み、宮古港の港湾施設が拡大整備されて、三陸地方の代表的な港として発展しました。明治中期には、東京湾汽船の定期便が就航しましたが、地元資本の三陸汽船との競争に敗れ撤退しました。宮古港は、埋め立てによって港湾設備を整え、漁獲物の集積地や大型の船舶の寄港能力を確保し、遠洋漁業・北洋漁業の拠点となりました。その後も港湾整備は進められましたが、2011年の東日本大震災では津波により壊滅的な被害を受け、現在復興が進められています。

まとめ

宮古湾は、豊かな水産資源と美しい景観に恵まれた、歴史と文化が息づく湾です。水産業の拠点として重要な役割を担う一方で、レジャーの場としても親しまれています。この地を訪れることで、自然と歴史が織りなす魅力を感じることができるでしょう。

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