偏西風

偏西風の概要

偏西風（へんせいふう、英: Westerlies）は、地球の中緯度帯において、西から東へ吹く風のことを指します。この風は、通常、南北の両半球で、主に30度から65度の緯度帯で発生します。偏西風は成層圏や熱帯の上空でも観察され、年間を通して存在づけられています。これらの気流は、航空機の飛行や雲の動きによってもその存在が認識され、特に中緯度の対流圏において顕著です。

偏西風の生成メカニズム

偏西風は、熱帯地域での加熱によるハドレー循環と極付近の冷却による極循環の二つの要素から生じます。赤道から極地への温度差が、風の流れに影響を与えます。また、地球の自転によるコリオリの力も、この風の発生に重要な役割を果たします。

特に、赤道近くでは上昇気流が形成され、その結果、高圧帯が生成されます。この高圧帯からは、偏西風が高緯度側に向かって吹き出し、加えて貿易風が低緯度側へ流れ出します。北半球では、この偏西風は南西方向に、南半球では北西方向に流れます。

偏西風とジェット気流

偏西風は通常、対流圏高度が上がるにつれてその強度が増し、対流圏界面付近では風速が最大に達します。特にその中で、風速の強い狭い区域であるジェット気流が形成されます。北半球の冬季には、偏西風が特に発達し、その平均風速が毎秒80メートルに達することがあります。

偏西風波動と気候への影響

赤道と極地域の温度差が大きくなる際、偏西風は蛇行を始めることがあります。この現象は「偏西風波動」と呼ばれ、波長には超長波（10,000 km前後）、長波（3,000 - 8,000 km）、短波（3,000 km以下）が含まれます。この波動の影響を受け、移動性の低気圧や高気圧は中緯度帯で西から東へと移動することになります。

偏西風の蛇行は短期的な天気予報のみならず、季節予報においても重要な要素となります。特に、長い波長を持った持続的な蛇行が気候パターンに大きな影響を及ぼすことがあります。

実際の影響の例

2010年夏の後半には、偏西風の動きによって中国大陸東部で南に、日本周辺では北に蛇行し、その結果日本では太平洋高気圧が影響を及ぼし続け、極端な高温となった状況が見られました。これにより、偏西風がいかに気候に対して重要な役割を果たしているかが証明されました。

参考文献

• - 『地理用語集』山川出版社
• - 『日本大百科全書（ニッポニカ）』小学館
• - 『国際大百科全書（ブリタニカ）』ブリタニカ・ジャパン

また、関連する項目として貿易風、ジェット気流、極風、気圧の谷なども存在します。偏西風を理解することで、気象現象や環境の変化について深く考察する手助けとなり、私たちの日々の天気や気候の理解も深まることでしょう。

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