成田為三

成田為三（なりた ためぞう）

生涯

成田為三は、1893年（明治26年）12月15日に秋田県北秋田郡米内沢町（現在の北秋田市米内沢）で、役場職員の息子として生まれました。1909年（明治42年）に鷹巣准教員準備場を卒業後、秋田県師範学校に進学。1913年（大正2年）に同校を卒業し、鹿角郡毛馬内町（現在の鹿角市十和田）の毛馬内小学校で教鞭を執りました。

1914年（大正3年）には、上野の東京音楽学校（現在の東京藝術大学）に入学。在学中には、ドイツから帰国したばかりの山田耕筰から指導を受けました。1916年（大正5年）頃には、代表作である「はまべ（浜辺の歌）」を作曲しています。

1917年（大正6年）に東京音楽学校を卒業後、佐賀県師範学校で教生を務めましたが、作曲活動を続けるため、東京市の赤坂小学校の訓導となりました。この時期に、児童雑誌『赤い鳥』を主宰していた鈴木三重吉と交流を深め、同誌に多くの作品を発表しました。

1922年（大正11年）にはドイツのベルリンへ留学。ロベルト・カーンに和声学、対位法、作曲法を、カール・ハインリヒ・バルトにピアノを師事し、指揮法も習得しました。1926年（大正15年）に帰国後、対位法の知識を活かした理論書を執筆。また、当時の日本にはなかった初等音楽教育での輪唱を普及させ、輪唱曲集なども出版しました。

1928年（昭和3年）には、川村女学院（現在の川村学園）と東洋音楽学校（現在の東京音楽大学）で講師を兼任。1942年（昭和17年）には、東京高等音楽学院（現在の国立音楽大学）の教授に就任しました。1945年（昭和20年）4月13日の空襲で滝野川の自宅が被災し、米内沢の実家へ疎開。

半年間の疎開生活の後、1945年（昭和20年）10月27日に玉川学園の教員として迎えられ上京しましたが、その2日後の10月29日に脳溢血で急逝しました。享年51歳。葬儀は玉川学園の講堂で行われ、東京高等音楽学院と玉川学園の生徒によって「浜辺の歌」が捧げられました。遺骨は故郷の竜淵寺に納められ、米内沢には顕彰碑が建てられています。また、「浜辺の歌音楽館」では成田為三の業績が紹介されています。

主な作品

成田為三は、「浜辺の歌」や「かなりや」などの歌曲・童謡の作曲家として知られていますが、実際には多くの管弦楽曲やピアノ曲も作曲しています。しかし、その多くが戦災で失われ、音楽理論に長けた本格的な作曲家としての側面はあまり知られていません。愛弟子であった岡本敏明らの研究により、これまでに300曲以上の作品が確認されており、日本の音楽界におけるその役割は再評価されつつあります。

管弦楽

二つのローマンス
交響曲「東亜の光」

室内楽

ヴァイオリンとピアノのためのカノン ト長調（1925年出版）

ピアノ

CD「成田為三ピアノ曲全集」（2007年、白石光隆演奏）
メヌエット
ロンド ロ短調（1925年出版）
フーゲ ハ長調（1926年出版）
四季
秋 - 月を仰ぎ ハ短調（1934年出版）
フーゲ ト長調（1936年出版）
ピアノソナタ ト短調 第1楽章（1937年出版）
「浜辺の歌」変奏曲
ロンド ト短調（1943年出版）
「君が代」変奏曲（1943年出版）
「さくら」変奏曲（1965年出版）

独唱

浜辺の歌（本人編曲による女声合唱版あり）
望郷の歌
清怨
赤い鳥小鳥
犬のお芝居
かなりや
りすりすこりす
はっぱ
みのり（国民歌謡）
昼と夜と（三木露風 詞）

混声合唱

とこしへに
松島や
敷島の（本居宣長 詞）
月
母よ、さらば
梅花
秋田おばこ
庄内おばこ
佐渡おけさ

女声合唱

うらうらと
見渡せば
すみれ
ほろほろと

男声合唱

不盡山を望みて

団体歌

秋田県民歌
能代市立渟城第一小学校校歌
太田町（現・大仙市）立太田南小学校校歌
秋田市立秋田商業高等学校校歌
秋田県立能代北高等学校校歌
聖霊女子短期大学付属高等学校校歌
前田村（現・北秋田市）立前田小学校校歌
川村学園学園歌

著書

『創作唱歌』敬文館（全4集、1919年）
『初めて学ぶ人の対位法及び作曲法』先進堂、1929年
『対位法の基礎(作曲法講座)』音楽世界社、1935年
『和声学』六星館、1935年
『楽式』音楽世界社、1936年
『楽器編成法』白眉出版社、1943年

編著・共著

『舞踏新曲ワルツ集』上・下 成田為三編　培風館 1923年
『民謡楽譜 磯の燕』成田為三 曲・北原白秋 作 アルス 1925年
『新日本小学唱歌』成田為三・小松耕輔編集 宝文館 1931年 -1932年

参考文献

東京日日通信社 編「成田為三」『現代音楽大観』日本名鑑協会、1927年、59-60頁。
成田為三『成田為三名曲集』玉川大学出版部、1965年。
“玉川豆知識 No.83 3日だけの先生、成田為三”. 学校法人玉川学園.

外部リンク

成田為三の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト
* 成田為三 - ピティナ・ピアノ曲事典

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