成穆皇后

成穆皇后（せいぼくこうごう）は、南宋の孝宗（こうそう）皇帝の最初の正室です。彼女は皇帝が即位する前に亡くなったため、皇后として長く宮廷にいたわけではありません。姓は郭（かく）氏。彼女の生涯は、南宋の歴史において重要な意味を持っています。

生い立ちと結婚

成穆皇后は、開封府祥符県（現在の河南省開封市祥符区）の出身です。父は郭瑊（かくかん）、母は趙氏（ちょうし）で、趙氏は宋の宗室の娘でした。つまり、彼女は皇族の血を引いていたことになります。兄弟には郭師禹（かくしう）・郭師元（かくしげん）がいます。

紹興14年（1144年）、郭氏は普安郡王（ふあんぐんおう）であった趙伯琮（ちょうはくそう、後の孝宗）に嫁ぎました。当時、彼女は咸寧郡夫人（かんねいぐんぶにん）に封ぜられています。この結婚は、彼女の人生における大きな転換点となりました。

皇子たちの母として

郭氏は、孝宗との間に4人の男子をもうけました。彼らはそれぞれ、南宋の皇室において重要な役割を果たすことになります。

1. 趙愭（ちょうき）：荘文太子（そうぶんたいし）
2. 趙愷（ちょうがい）：魏恵憲王（ぎけいけんおう）
3. 趙惇（ちょうじゅん）：後の光宗（こうそう）皇帝
4. 趙恪（ちょうかく）：邵悼粛王（しょうとうしゅくおう）

特に、三男の趙惇は、後に光宗として即位し、南宋の皇帝となりました。成穆皇后は、光宗の母として、その治世に大きな影響を与えたと考えられます。

若すぎる死と追贈

しかし、成穆皇后は紹興26年6月2日（1156年6月21日）、わずか31歳という若さで亡くなりました。彼女の死は、孝宗にとって大きな悲しみであったことでしょう。臨安銭塘県（現在の浙江省杭州市）の南屏山（なんぺいさん）に葬られました。

彼女の死後、孝宗は彼女を追悼し、様々な称号を贈りました。紹興30年（1160年）8月には淑国夫人（しゅっこくぶにん）、紹興31年（1161年）9月には福国夫人（ふっこくぶにん）とされました。さらに、紹興32年（1162年）6月には皇太子妃（こうたいしひ）に追封され、同年8月に高宗（こうそう）が養子の孝宗に譲位すると、郭氏は皇后を贈られました。諡（おくりな）は最初「恭懐（きょうかい）」とされましたが、まもなく「安穆（あんぼく）」と改められました。

紹熙5年（1194年）10月、最終的に諡は「成穆（せいぼく）」と改められました。これは、彼女の生涯と功績を称えるものでした。

参考文献

『宋史』（そうし）巻243 后妃伝下 成穆郭皇后伝
『宋会要輯稿』（そうかいようしゅうこう）巻12 后妃一 孝宗安穆郭皇后

成穆皇后の生涯は、短いながらも南宋の皇室に大きな影響を与えました。彼女は、孝宗を支え、4人の皇子を育て上げ、そのうちの一人が皇帝となったのです。彼女の存在は、南宋の歴史において決して忘れてはならないものと言えるでしょう。

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