戦争と人間 (映画)

映画『戦争と人間』

『戦争と人間』は、1970年から1973年にかけて公開された、山本薩夫監督による3部作の日本映画です。五味川純平の同名小説を原作とし、日活が製作を手掛けました。この作品は、日本映画としては『人間の條件』に次ぐ、9時間23分という長大な上映時間を誇る、戦争をテーマにした大河超大作です。

作品解説

物語は1928年の張作霖爆殺事件前夜から、1939年のノモンハン事件までを時代背景としています。激動の時代の中で、様々な立場の人々の生き様と死に様を描き、その後の太平洋戦争へと至る経緯を丁寧に表現しています。

特筆すべきは、第三部におけるソ連国内でのロケ撮影です。モスフィルムの協力の下、ノモンハン事件の大規模な戦闘シーンが、ソ連軍の全面的な協力によって撮影されました。実物の戦車であるT-34-85が使用された点も、当時の日本映画としては異例であり、その迫力は圧巻です。

当初は、東京裁判における伍代家の破滅までを描いた四部作として企画されていましたが、豪華なキャスト、本格的な戦闘シーン、海外ロケなど、製作費が膨大になったため、日活の経営悪化も重なり、結果的に第三部で完結することとなりました。第一部だけでも3億5000万円の製作費が投じられましたが、興行的には大成功を収めました。

受賞歴

第一部
第44回キネマ旬報ベスト・テン 第2位
第25回毎日映画コンクール 監督賞、美術賞、録音賞
第24回日本映画技術賞（姫田真佐久）

第二部
第45回キネマ旬報ベスト・テン 第4位
第25回日本映画技術賞（横尾嘉良、深民浩、古山恒夫）

第三部
第47回キネマ旬報ベスト・テン 第10位

あらすじ

物語は、大正から昭和へと時代が移り変わる頃、日本陸軍が満州への進出を企てるところから始まります。昭和恐慌による不況が蔓延する中、満州に眠る豊富な資源に着目し、そこでの産業興隆こそが日本経済の回復、特に東北地方の農村問題の解決策だと軍部は主張します。そのために、日本が支援する張作霖の奉天派軍閥の協力を得ようとしますが、張作霖の息子である張学良は蒋介石との同盟へと転じ、日本に対抗しようとします。

1928年、三・一五事件により、共産主義者の標拓郎が逮捕されます。その数日後、中堅財閥である伍代家の邸宅では、アメリカから帰国した長男・英介の歓迎会が開かれます。伍代財閥の工場で技長を務める矢次憔夫は、標耕平を連れて当主・由介、満州担当の弟・喬介、次男・俊介、長女・由紀子、次女・順子に引き合わせます。パーティーでは、日本の中国進出に関する話題で持ちきりとなり、由介は、四大財閥を超えるために満州進出と軍需産業への参入を計画し、英介にそのプロジェクトへの参画を促します。一方、心優しい俊介は満州進出に疑問を抱きますが、由介から伍代の人間としての自覚を諭されます。矢次は耕平と遊ばせ、二人は親友となります。由紀子は矢次に不倫願望を抱き誘惑しますが、紳士的な態度を貫く矢次に失望し、憲兵の柘植進太郎に接近します。

一方、満州では、喬介が「満州伍代」として君臨し、流通業の傍ら、阿片の密売などにも手を染めていました。商社マンの高畠正典や、暗殺も厭わない鴫田駒次郎が、その活動を支えています。

スタッフ

監督：山本薩夫
企画：大塚和、武田靖、宮古とく子
原作：五味川純平
脚本：山田信夫（全部）、武田敦（第二部）
撮影：姫田真佐久
照明：岩木保夫（第一・二部）、熊谷秀夫（第三部）
録音：古山恒夫
美術：横尾嘉良（全部）、深民浩（第一・二部）、大村武（第三部）
編集：丹治睦夫（第一・二部）、鈴木晄（第三部）
音楽：佐藤勝

キャスト

伍代由介：滝沢修
伍代喬介：芦田伸介
伍代英介：高橋悦史
伍代由紀子：浅丘ルリ子
伍代俊介：中村勘九郎（第一部）→北大路欣也（第二部・第三部）
伍代順子：佐藤萬理（第一部）→吉永小百合（第二部・第三部）
柘植進太郎：高橋英樹
鴫田駒次郎：三國連太郎（第一部・第二部）
標耕平：吉田次昭（第一部）→山本圭（第二部・第三部）
ナレーター:鈴木瑞穂

その他、石原裕次郎、丹波哲郎、二谷英明、加藤剛、西村晃など、多くの豪華キャストが出演しています。

テレビ放送

1980年1月3日から5日にかけて、東京12チャンネル（現・テレビ東京）で、『連続3日間特別ロードショー』として全3部作が放送されました。

外部リンク

第一部
第二部
* 第三部

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