戦傷章

戦傷章（Verwundetenabzeichen）は、ドイツ帝国およびナチス・ドイツにおいて、戦傷者に授与された記章です。

概要

戦傷章は、第一次世界大戦末期の1918年にドイツ帝国が制定したのが始まりです。陸軍用の戦傷章は鉄帽と交叉した剣をモチーフにしたのに対し、海軍用は錨と交叉した剣をモチーフとしています。

1939年に第二次世界大戦が勃発すると、ナチス・ドイツによっても同様の戦傷章が制定されました。1935年のスペイン内戦に参加して負傷した者や、1944年7月20日のヒトラー暗殺未遂事件で負傷した者専用の戦傷章も制定されています。

戦後のドイツ連邦共和国（西ドイツ）では、1957年7月26日に制定された称号・勲章・記章に関する法律(Gesetz über Titel, Orden und Ehrenzeichen)に従い、多くのナチス・ドイツ時代の勲章・記章類と共に鉤十字を除いたデザインの1957年版が制定されました。

戦傷章は、負傷の程度や回数に応じて、金章、銀章、黒章の三等級に分かれています。1回から2回の負傷で黒章、3回から4回の負傷で銀章、5回以上の負傷で金章が授与されました。ただし、腕や足を失ったり、失明したりするなどの重大な負傷をした者には銀章、再起不能となった者には金章が（負傷した回数とは無関係に）必ず授与されました。

1918年版

第一次世界大戦中に制定された戦傷章です。鉄帽と剣、または錨と剣のデザインが特徴です。

1939年版など

第二次世界大戦中に制定された戦傷章です。1918年版のデザインを踏襲しつつ、ナチス・ドイツの意匠が加えられています。

著名な受章者

ハンス・ウルリッヒ・ルーデル（金章受賞者）: 金章受章後も自ら志願して現役を続行し終戦まで戦い抜きました。
アドルフ・ヒトラー: 第一次世界大戦での従軍時に黒章を受章。総統就任後も戦傷章黒章と一級鉄十字章、黄金ナチ党員バッジの3つの勲章は常に着用していました。

戦傷章は、兵士にとって名誉の象徴であると同時に、戦争の悲惨さを物語るものでもあります。

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