黄金ナチ党員バッジ

黄金党員名誉章（Goldenes Ehrenzeichen der NSDAP）

黄金党員名誉章は、国民社会主義ドイツ労働者党、通称ナチ党が初期からの党員に授与した特別なバッジです。「金枠党員章」や「高級党員章」とも呼ばれました。

概要

バッジには制服用の30.5mmと私服用の24mmの2種類が存在します。制服用はDESCHLER & SOHN社、私服用はJOS. FUESS社とDESCHLER & SOHN社の2社が製造を担当し、それぞれデザインが異なりました。通常の党員章とは異なり、金色の月桂冠で囲まれているのが特徴です。

このバッジは、ナチ党が政権を掌握した1933年11月9日に制定されました。授与対象は、初期からナチ党に参加し、継続的に活動していた党員で、党員番号が10万番までの古参党員に限られました。バッジの裏面には、その党員の番号が刻印されています。実際に入党番号が10万番以内だったのは1929年中盤頃までと推定され、実際に授与された党員は約6万人程度だったとされています。そのため、正規の黄金バッジは制服用と私服用を合わせて約12万個製造された計算になります。ただし、党に申請書類を送ることで、スペアを宝飾品メーカーに私費で発注することが許可されており、複数のバッジを購入した党員も少なくありません。

黄金バッジを持つ党員は、後から入党してきた一般の党員を「日和見主義者」と見下す傾向にありました。一般党員のバッジを「恐れのバッジ」と揶揄し、嘲笑することもあったようです。その結果、金枠バッジを持つ一般党員が、一般バッジを持つ幹部の命令を無視するなど、党内秩序に支障をきたす事態が頻発しました。

このような問題を受け、「黄金党員名誉章」は1936年1月30日に廃止され、新たに「金枠党員章総統功労章」として復活しました。この新たなバッジは、アドルフ・ヒトラーが特に功績を認めた者に授与されました。国防軍最高司令部総長のヴィルヘルム・カイテル元帥や、ヒトラー内閣蔵相のルートヴィヒ・シュヴェリン・フォン・クロージク伯爵など、ナチ党員でなくてもヒトラーが功績を認めた者も授与対象となりました。これらのバッジの裏面には党員番号の代わりに、ヒトラーのイニシャル「A.H」と、ナチスにとって特別な出来事があった年月日（党政権樹立年月日など）が刻印されています。ナチス体制下では、ドイツ勲章と血の勲章に次ぐ、第3位の功労賞とみなされていました。

ヒトラー自身の黄金党員バッジには、党員番号「1」が刻印されていました。しかし、党員番号「7」が刻印されているという説や、「7」に加えヒトラーのサインが刻印されているという説も存在します。実際には、ヒトラーはドイツ労働者党時代に555番の党員番号を与えられ、1921年に離党・復党した際に3680番の党員番号が交付されました。1925年のナチ党再建時に党員番号の再登録が行われ、ヒトラーの党員番号は1番となりました。ヒトラーは自殺する前に、このバッジをマクダ・ゲッベルスに預けました。その後、バッジはソ連軍に没収され、ロシア連邦公文書館に保管されていましたが、2005年に盗難に遭いました。本物のヒトラーのバッジであれば、当時の価値で300万ユーロ（約4億円相当）と推定されています。

ただし、マクダ・ゲッベルスは夫のヨーゼフと共に自殺後、ヒトラーと同様に親衛隊員によって焼却されており、バッジだけが無傷でソ連軍に鹵獲されたと考えるのは難しいという意見もあります。

現在、金枠党員章はコレクターの間で非常に人気が高く、高額で取引されています。そのため、贋作が大量に出回っており、贋作バッジを専門に収集する研究家も存在するほどです。

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