戦国ロック 疾風の女たち

1972年の暮れ、12月27日に封切られた日本映画『戦国ロック 疾風の女たち』は、日活が製作・配給した一編であり、同社のロマンポルノ作品群に属します。カラー、シネマスコープ形式で撮影され、上映時間は80分でした。

本作は、後に「西部警察」や「あぶない刑事」、「相棒」といった国民的人気テレビドラマシリーズを数多く手掛け、日本のアクションドラマ界を牽引することになる長谷部安春監督が、ロマンポルノというジャンルで初めて演出を担当した作品として注目されます。かつて日活ニューアクションで腕を磨いた監督が、新境地を開拓した意欲作として位置づけられます。

物語の舞台は、天下が乱れる戦国時代。この激動の世を背景に、掟に縛られず、自由を求め生きる女群盗たちの集団が主人公です。彼女たちの鮮烈で疾風のような生き様が、エネルギッシュな活劇として描かれます。

公開当時は、年末年始の興行を見越した「お正月の大作」として位置づけられ、幅広い観客層にアピールしました。

製作から長い年月を経た2012年には、日活百周年を記念するイベント「生きつづけるロマンポルノ」の一作品として選ばれ、渋谷オーディトリウムを始めとする日本各地の映画館でリバイバル上映が実現しました。これにより、往年のファンが再びスクリーンで鑑賞する機会を得ただけでなく、新たな世代の映画ファンにも本作が紹介されることとなりました。

製作を支えたスタッフ陣も充実しています。企画は伊藤亮爾、脚本は個性的な筆致で知られる大和屋竺と藤井鷹史が共同で担当しました。撮影は森勝、美術は松井敏行、録音は長橋正直、照明は直井勝正がそれぞれ務めています。編集は鈴木晄、音楽は月見里太一（鏑木創名義）と杉田一夫が手掛けました。監督補佐は白井伸明が務め、色彩計測は水野尾信正、現像は東洋現像所、製作進行は斉藤英宣が担当しました。また、作品に不可欠なアクションシーンの演出は、田畑善彦が技斗として担当しています。

キャストも多彩な顔ぶれです。主要な女群盗たちを演じたのは、田中真理（えん役）、山科ゆり（ねね役）、続圭子（しの役）といった女優陣に加え、相川圭子（うめ役）、しまさより（すずめ役）、真湖道代（於寧役）らが出演しています。物語に深みを与える存在として、花柳幻舟が弥生の母役で登場します。男性キャストでは、天魔太郎を梶健司が、新田の次郎を荒戸源次郎が演じるなど、個性の強い俳優たちが揃っています。その他にも、三川裕之、大山節子、五條博、木夏衛、長弘、溝口拳、白井鋭、雪丘恵介、小林亘、中平哲仟、田畑善彦、北上忠行、谷口芳昭、氷室政司、佐藤了一、山岡正義、市原久、ジェームズ・マーチン、ブリエンス・ロジャーといった多数の俳優が脇を固め、戦国乱世の混沌とした世界観を構築しています。

本作は、村川透監督、古屋和彦・村川透脚本、峰岸徹主演の『哀愁のサーキット』と同時に上映されました。異なるジャンルの作品が併映されることで、当時の日活ラインナップの幅広さがうかがえます。

『戦国ロック 疾風の女たち』は、長谷部安春監督がロマンポルノというフィールドで放った鮮烈な一撃であり、その後の活躍を知る上で重要な位置を占める作品です。戦国時代を舞台にしたダイナミックな活劇と、個性豊かなキャラクターたちが織りなす物語は、公開から時を経た現在においても、そのエネルギーと魅力は色褪せていません。

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