戦国自衛隊 オリジナル・サウンドトラック

「戦国自衛隊」オリジナル・サウンドトラック

1979年に公開された角川映画『戦国自衛隊』は、同時代の日本の映画界において大きな注目を集めた作品の一つです。この映画に関連して、音楽面でも複数のレコード会社から合計4枚のシングルレコードが発売されました。一方で、劇中で使用された楽曲などを収録したサウンドトラックアルバムは、キャニオンレコード単独でリリースされています。

1979年版サウンドトラックの特徴

この1979年版サウンドトラック盤が特筆される点は、通常では考えられない、所属レーベルの異なる複数のアーティストによる楽曲が1枚のアルバムに収録されたことです。キャニオンレコード、アトランティック・レコード、コロムビア・レコードという異なる会社のアーティストたちが「呉越同舟」の形で顔を揃えたこの試みは、当時の日本の音楽業界における各社間の強い縄張り意識を考えると極めて異例であり、レコード制作のあり方を変えるのではないかと大きな話題を呼びました。

この異例の企画を主導したのは、本作でプロデューサーと音楽監督を兼任した角川春樹氏です。彼は自身が好きだったアメリカ映画『アメリカン・グラフィティ』のように、様々なアーティストの多様な楽曲を劇中で効果的に使用することを意図していました。しかし、結果として特定の楽曲が強い印象を残し、商業的なヒットに繋がるまでには至らなかったとされています。

アルバムには合計10曲が収録されましたが、シングルカットされた楽曲がある一方で、ジョー山中氏の「GOIN' HOME」や高橋研氏の「星空へ駆け登れ」といった楽曲はシングルとしてはリリースされませんでした。

このアルバムのレコーディングには、ゼネラル・プロデューサーとして角川春樹氏、プロデューサーとして鈴木清司氏と高桑忠男氏（東映）が携わっています。

その後のサウンドトラックの展開

長年にわたり、本来の劇伴音源の所在が不明とされてきましたが、2022年に映画の4Kデジタル修復版が発売される際に、劇伴のオリジナル音源（6mmテープ）が発掘されました。過去に「戦国自衛隊」のサウンドトラックとして流通していたものの中にはイメージソング集の側面が強いものがありましたが、今回発掘された音源は、羽田健太郎氏が作曲・編曲を手がけた、本編で使用されたインストゥルメンタルの劇伴です。この音源は、2022年版の特典として初めてCD化され、多くのファンに歓迎されました。

そして2023年には、さらに多くの音源が発掘され、これを集大成とした2枚組CD「戦国自衛隊」オリジナル・サウンドトラック（2023年版）がリリースされました。この完全盤には、本編で使用された楽曲に加え、遺されていた未使用音源の数々が収録され、失われたと思われていた「戦国サウンドの伝説」が明らかになりました。また、ジョー山中氏が歌うエンディングテーマ「ララバイ・オブ・ユー」や、松村とおる氏による主題歌「戦国自衛隊のテーマ」をはじめとする、映画を彩った主題歌や挿入歌も網羅。これらの楽曲はすべて新たにリマスタリングが施されています。

関連シングル

映画公開時には、以下の4枚のシングルが発売されました。

「戦国自衛隊のテーマ」
歌：松村とおる。
SIDE AにはWASH演奏による「戦国自衛隊のテーマ」、SIDE Bにはセンチメンタル・シティ・ロマンス演奏による「愛よ静かに帰れ」を収録。
ジャケットは映画ビジュアルを使用。
2008年に甲斐よしひろ氏がカバー。

「ララバイ・オブ・ユー / LULLABY OF YOU」
歌：ジョー山中。
映画エンディングテーマ。
SIDE Aに「ララバイ・オブ・ユー」、SIDE Bに「もうなくすものはない」を収録。
映画ビジュアル版とジョー山中氏と子供の写真版の2種類のジャケットが存在。
2008年に宇崎竜童氏がセルフカバー。

「スクリーンに雨が降る」
歌：高橋研。
SIDE Aに「スクリーンに雨が降る」、SIDE Bに「ジャイアント・シティ」を収録。
ジャケットは映画ビジュアルを使用。

「ドリーマー / DREAMER」
歌・演奏：井上堯之。
SIDE Aに「ドリーマー」、SIDE Bに「終りのない旅」を収録。
* ジャケットは映画ビジュアルを使用。

これらのシングルから、「戦国自衛隊のテーマ」は後年発売された複数の角川映画関連コンピレーションアルバムにも繰り返し収録されています。

このように、『戦国自衛隊』のサウンドトラックは、当時の音楽業界における異例の企画として注目されただけでなく、時を経て本来の劇伴音源が発見・リリースされるなど、その全貌が徐々に明らかになっていった作品と言えます。

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