戦車第1師団 (日本軍)

戦車第1師団：機甲戦力の中核

戦車第1師団は、大日本帝国陸軍が保有した機甲師団の一つであり、その歴史は1942年（昭和17年）に満州の寧安で編成されたことに始まります。当初は4個の戦車連隊、1個の機動歩兵連隊、そして1個の機動砲兵連隊といった部隊で構成されていました。

編成と配置

戦車第1師団は、第1戦車団を基幹として編成され、機甲軍に所属しました。編成後、満州東部国境付近に配置され、実戦を想定した教育と訓練に励みました。有事の際には、第1方面軍に配備される計画でした。しかし、太平洋戦争の戦局悪化に伴い、その運命は大きく変わることになります。

戦局の変化と転戦

1944年（昭和19年）4月、師団隷下の戦車第9連隊が第31軍に編入され、サイパン島へと移動しました。その後、戦車第3連隊と師団防空隊が大陸打通作戦に投入されることになりました。

1945年（昭和20年）3月、戦局が逼迫する中で、戦車第1師団は本土決戦に備えるため日本本土へと移動します。第12方面軍第36軍に編入され、師団司令部と戦車第1連隊は佐野に、戦車第5連隊は栃木県金丸原（後に埼玉県加須町へ移動）に、機動歩兵第1連隊と機動砲兵第1連隊は栃木市にそれぞれ配置されました。

本土決戦への準備

本土決戦に向けて、連合軍の上陸が想定される九十九里浜を第一に、相模湾や鹿島灘も考慮に入れ、防御態勢を整えました。夜間行動を基本とし、筑波山東側と多摩川西側に掩蔽部を構築するなど、優勢な連合軍に対抗するための準備が進められました。しかし、実際には戦闘を交えることなく終戦を迎えることとなりました。

師団の概要

歴代師団長

星野利元 中将：1942年（昭和17年）9月1日 - 1945年6月15日
細見惟雄 中将：1945年（昭和20年）6月15日 - 終戦

参謀長

清水馨 中佐：1942年（昭和17年）7月19日 - 終戦

最終司令部構成

参謀長：清水馨大佐
参謀：樋口六之助少佐
高級副官：宮地育三中佐
経理部長：岸本勘一主計大佐

機甲軍創設時の所属部隊

戦車第1旅団
戦車第1連隊
戦車第5連隊
戦車第2旅団
戦車第3連隊→昭和19年 第11軍に転属、中支で終戦
戦車第9連隊→昭和19年 第31軍第43師団に転属、サイパン、グアムで全滅
機動歩兵第1連隊
機動砲兵第1連隊
戦車第1師団速射砲隊
戦車第1師団捜索隊→戦車第26連隊に改編、第1軍第109師団に転属、昭和19年硫黄島で全滅
戦車第1師団防空隊
戦車第1師団工兵隊
戦車第1師団整備隊
戦車第1師団輜重隊

最終所属部隊

戦車第1連隊（福岡）：中田吉穂大佐
戦車第5連隊（福岡）：杉本守衛大佐
機動歩兵第1連隊（久留米）：沢敏行大佐
機動砲兵第1連隊（福岡）：神部英彦中佐
戦車第1師団速射砲隊：須山正規少佐
戦車第1師団工兵隊：安藤進少佐
戦車第1師団整備隊：鈴木宣少佐
戦車第1師団輜重隊：前野重弘中佐
戦車第1師団通信隊：森田一雄少佐

戦後の影響

戦車第1師団は、その短い歴史の中で、満州から太平洋戦線、そして本土決戦準備へと転戦を重ねました。その過程で、多くの将兵が戦没し、部隊も解散することになりました。しかし、その存在は、大日本帝国陸軍の機甲戦力の発展と変遷を語る上で、重要な役割を果たしたと言えるでしょう。

関連事項

大日本帝国陸軍師団一覧
司馬遼太郎 - 作家。同師団戦車第1連隊付小隊長として終戦を迎えた。

参考文献

秦郁彦編『日本陸海軍総合事典』第2版、東京大学出版会、2005年。
外山操・森松俊夫編著『帝国陸軍編制総覧』芙蓉書房出版、1987年。
外山操編『陸海軍将官人事総覧 陸軍篇』芙蓉書房出版、1981年。
『別冊歴史読本 戦記シリーズNo.32 太平洋戦争師団戦史』、新人物往来社、1996年。

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