戦隊ロボ

戦隊ロボット：特撮を彩る巨大ヒーローの軌跡

「戦隊ロボ」とは、日本の特撮作品「スーパー戦隊シリーズ」に登場する、巨大な人型ロボットの総称です。作品によっては「戦闘巨人」などの名称も用いられますが、これらも広義の「ロボ」に含まれます。海外版の「パワーレンジャー」シリーズでは、「メガゾード(Megazord)」という名称で親しまれています。

スーパー戦隊シリーズのフォーマット

スーパー戦隊シリーズでは、基本的に以下の流れが各話で繰り返されます。

1. 等身大のヒーローが怪人を倒す。
2. 倒された怪人が巨大化する。
3. 戦隊メンバーが巨大メカに乗り込み、合体して人型ロボットを形成。
4. 巨大ロボットで怪人と戦う。

このフォーマットは、アニメの「巨大ロボ」と「5色のヒーロー」という2つの異なる要素を組み合わせた結果生まれました。番組制作上の必要から生まれたものが定番化したものであり、当初から計画されたものではありません。この形式がなぜ人気を博したのかは、いまだ理論化されていません。しかし、この巨大ロボ戦の存在は、新番組企画において常に重要な要素であり、スーパー戦隊シリーズ最大の特徴となっています。

デザインと制作

デザインの特徴

戦隊ロボのデザインには、他の巨大ロボット作品とは異なる独自の特徴があります。

実写作品であること：着ぐるみの中に人が入り動かすため、可動範囲が考慮されます。デザイン画を完全に再現することは難しく、製作過程で調整が行われます。
玩具展開：幼児向けの玩具として販売されるため、安全性が最優先されます。複雑なギミックは避けられ、3歳児でも安全に遊べる仕様でなければなりません。また、玩具は原則として番組放送年度のみの販売となります。
* 顔のデザイン：子供たちが抱いて眠れるような、親しみやすい顔立ちが求められます。恐ろしい形状の顔は不適切とされます。

撮影

戦隊ロボの登場シーンは、各話ごとに撮影されるのではなく、数話分をまとめて撮影します。年間で4回に分けて撮影が行われ、「初期10話分」「2号ロボ登場編」「夏の劇場版と6人目登場編」「秋の最強ロボ関連」といったスケジュールで組まれます。撮影は特撮研究所が担当していますが、過去にはスケジュールや予算の都合から、アクション監督が担当していた時期もありました。デジタル技術の導入により、撮影時間の短縮が実現されています。

撮影用スーツ

撮影用スーツは、まず粘土模型を基に金型を作り、各パーツを成形します。スーツは、ロボットらしさを出すために硬くて重いFRP（繊維強化プラスチック）で造型されています。初期はエキスプロダクションが担当していましたが、「太陽戦隊サンバルカン」以降はレインボー造型企画が担当しています。スーツはアップ撮影用とアクション用の2種類が制作されていましたが、「百獣戦隊ガオレンジャー」以降は、アクション用スーツの質を向上させることで、すべての撮影に対応するようになりました。

アップ撮影用

合体シーンや必殺技シーンなど、ハイライトシーンの撮影や、雑誌掲載、商品パッケージに使用されます。FRPを主材料とし、表面を丁寧に研磨して着色。2m以上の大きさがあり、重量があるため、着用しての歩行は困難です。

アクション用

毎回の撮影で使用されます。ウレタンなどの柔らかい素材を使い、表面をビニール系素材で処理。FRPの使用量を抑えて、動きやすく、ぶつかっても破損や怪我をしないように配慮されています。

ミニチュア

ロボットに合体する前のメカや母艦などは、ミニチュアを使って撮影されます。1990年代からはCGも使用されるようになりましたが、特撮監督は「実在感」を重視し、CGとミニチュアを使い分けています。ミニチュアは基本的に各1台しか制作されません。初期はテグスで動かしていましたが、ラジコンモーターの導入により自走するようになりました。

戦隊ロボの歴史

1970年代

初期の「秘密戦隊ゴレンジャー」と「ジャッカー電撃隊」には巨大ロボは登場せず、ヒーローは大型飛行メカに搭乗していました。「ゴレンジャー」の企画段階では、「キャラクター人形以外に売れる商品を」という要望から、飛行メカが提案されました。当時、東映特撮ヒーロー番組ではバイクや自動車が主流でしたが、「イナズマン」のライジンゴーを経て、「ゴレンジャー」以降は等身大ヒーローでも巨大メカが登場することが定着しました。同時期、東映制作の巨大ロボット作品はアニメが主流でしたが、1978年の「スパイダーマン」に東映オリジナルの巨大ロボット「レオパルドン」が登場。翌年の「バトルフィーバーJ」で初の戦隊ロボット「バトルフィーバーロボ」が誕生しました。

1980年代

「バトルフィーバーロボ」には複雑なギミックはありませんでしたが、「電子戦隊デンジマン」の「ダイデンジン」は戦闘機から変形。「太陽戦隊サンバルカン」の「サンバルカンロボ」は2体のメカが合体するなど、年々ギミックが進化しました。これは、「マジンガーZ」から「コン・バトラーV」へと進化していった超合金ロボット玩具の流れに沿ったものです。1984年の「超電子バイオマン」の「バイオロボ」は、意思を持ったヒーローの仲間として描かれ、メカにもキャラクター性が付与されるようになりました。1986年の「超新星フラッシュマン」では、メインデザイナーが交代し、「フラッシュキング」は斬新な合体システムを採用しました。また、シリーズ初の2号ロボ「フラッシュタイタン」が登場しました。1987年の「光戦隊マスクマン」では、戦隊メンバーに1台ずつメカが割り当てられる5機合体が実現しました。1988年の「超獣戦隊ライブマン」では、ヒーローのモチーフに合わせた動物型メカが登場し、1号ロボと2号ロボが合体する「スーパー合体」が初登場しました。

1990年代

1991年の「鳥人戦隊ジェットマン」では、1号ロボが戦闘機形態に変形可能になり、スーパー合体も2形態で可能になるなど新機軸が導入されました。また、シリーズ初の3号ロボも登場しました。1992年の「恐竜戦隊ジュウレンジャー」は、「巨大ロボット」という概念を覆し、守り神である「守護獣」として設定されました。1号ロボは、肩の張り出しを取り入れ、脚のカラーリングが左右で異なるなど挑戦的なデザイン。2号ロボは単体で人型に変形しないというパターン破りをし、合体形態も新発想で構成されました。1994年の「忍者戦隊カクレンジャー」の「無敵将軍」は、人型ロボ5体による合体を実現。1995年の「超力戦隊オーレンジャー」は、多種多様なロボが登場し、戦隊ロボ総決算の様相を呈しました。1996年の「激走戦隊カーレンジャー」では、自動車モチーフが再登場し、陸上を走りながら合体するという新しい試みに挑戦。1998年の「星獣戦隊ギンガマン」の「ギンガイオー」は、超合金ブランドで発売され話題となりました。1999年の「救急戦隊ゴーゴーファイブ」では、初の列車モチーフを取り入れた「グランドライナー」が登場し、大ヒットを記録しました。

2000年代

2000年の「未来戦隊タイムレンジャー」の1号ロボは3通りの形態に合体可能という驚異的なギミックを持ちました。2001年の「百獣戦隊ガオレンジャー」では巨大ロボ戦にCGを本格導入。玩具は組み換え合体システムを採用し、単品販売に注力しました。2003年の「爆竜戦隊アバレンジャー」の「アバレンオー」は、1号ロボで初めて電動ギミックを取り入れました。2008年の「炎神戦隊ゴーオンジャー」では、12機のメカが合体する超巨大ロボ「エンジンオーG12」が登場し、戦隊ロボの歴史に新たな1ページを刻みました。2009年の「侍戦隊シンケンジャー」の1号ロボは、従来のロボとはプロポーションが全く異なり、横から見たボディがS字を描いています。当初は全合体しない方針でしたが、3号ロボからデザインの方向性を変え11体合体を実現しました。

2010年代

2010年の「天装戦隊ゴセイジャー」では、パーツを取り付けていくブロック玩具のような遊び方が導入されました。2012年の「特命戦隊ゴーバスターズ」は、巨大ロボ戦自体にドラマを与えることを目指し、ロボの合体や変形の面白さを追求しました。2015年の「手裏剣戦隊ニンニンジャー」では、「ロボットがロボットを操縦する」という斬新な発想が生まれました。2016年の「動物戦隊ジュウオウジャー」では、シンプルさを追求し、パンチ発射ギミックが復活しました。2017年の「宇宙戦隊キュウレンジャー」では、パーツの組み換えで1680通りもの組み合わせが可能になりました。2018年の「快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー」では、2つの戦隊のロボットが物語に絡み合う展開。2019年の「騎士竜戦隊リュウソウジャー」の1号ロボは、ブロックトイのような構造を備えています。

2020年代

2021年の「機界戦隊ゼンカイジャー」では、過去の戦隊ロボのモチーフが散りばめられ、左右合体システムや複数の合体パターンを持つロボが登場しました。2022年の「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」では、前作のロボットとの合体や歴代戦隊ロボのパーツをモチーフとしたアイテムが登場しました。

戦隊ロボットは、常に新しい技術やアイデアを取り入れながら進化を続けています。その歴史は、日本の特撮技術と玩具業界の発展を映す鏡であると言えるでしょう。

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