戸井田工業

戸井田工業（といたこうぎょう）は、東京都狛江市に本社を置く金属加工の専門企業です。創業以来、多岐にわたる金属製品の製造を手掛けていますが、特に映画、テレビ番組、舞台といったエンターテインメント分野や、資料館、博物館などで使用される金属製の美術小道具や装飾品の製作において、高い技術力と豊富な経験を持っています。

同社の事業内容は幅広く展開されています。映像作品や舞台、コマーシャルで使用される金属製の小道具全般の製作はもちろんのこと、日本の映画やテレビドラマにおけるガンアクションシーンの演出に不可欠な、劇用銃砲類の製作、レンタル、そして特殊効果の提供は、同社の特筆すべき事業の一つです。大砲やガトリングガン、火縄銃といった古式銃から現代の銃器に至るまで、リアルかつ安全に配慮したレプリカを製作し、発砲や着弾といった効果の演出も手掛けています。これらの劇用銃は「プロップガン」と総称され、特に同社が得意とする「電着銃」はその代表例です。

また、エンターテインメント分野以外にも、資料館や博物館での展示に使われる金属製品の製作も行っています。歴史的資料の再現や展示物の固定具など、専門的なニーズに応える製品を提供しています。さらに、一般向けの板金加工も重要な事業であり、コインパーキングのシステム機器の筐体や、各種看板など、幅広いオーダーに対応可能です。0.25mm程度の薄い板材から6.0mm厚の板材まで、多様な板金加工技術を駆使し、時には古物の飾り金物といった伝統的な技術も用います。これらの加工に加え、その他の機械加工も事業の一部として行っています。

会社の歴史は、昭和初期に遡ります。1935年（昭和10年）1月、東京都世田谷区成城の地に「戸井田板金製作所」として創業したのが始まりです。その後、事業の発展に伴い、1970年（昭和45年）10月には同じ成城の地で「有限会社戸井田板金製作所」として法人化されました。この時点での代表取締役は戸井田幸三氏で、資本金は50万円でした。法人化から一年後の1971年（昭和46年）10月には、社名を現在の「有限会社戸井田工業」へと変更しています。時代が進み、1987年（昭和62年）1月には代表取締役が戸井田幸雄氏に交代し、経営体制が引き継がれました。事業規模の拡大に対応するため、1990年（平成2年）8月には資本金を1,000万円に増資しています。そして同年11月、本社機能を東京都狛江市和泉本町に新築した自社ビルへ移転し、現在に至る活動の拠点としています。

同社の活動や技術は、関連業界の専門書や雑誌でも取り上げられています。主な参考文献としては、『BIG SHOT〜日本映画のガン・エフェクト〜』（コアマガジン）、月刊Gun誌に掲載された「映画・テレビのステージ・ガン紹介」などの記事、イラストレーター小林弘隆氏の画集『イラコバワークス』、そして過去に発行されていた『モデルガンチャレンジャー』といった媒体が挙げられます。これらの資料は、特に同社が関わる劇用銃や特殊効果の側面に光を当てています。関連する専門用語としては、劇用銃の総称である「プロップガン」や、同社独自の技術である「電着銃」などが挙げられます。

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