戸谷成雄

戸谷成雄：チェーンソーが織りなす木と空間の詩

戸谷成雄（とや しげお、1947年12月24日-）は、日本の現代彫刻界を代表するアーティストの一人です。長野県に生まれ、現在も埼玉県を拠点に制作活動を続けています。武蔵野美術大学名誉教授の称号も持ち、その長く充実したキャリアは、日本の現代彫刻史に大きな足跡を残しています。

戸谷成雄の作品の特徴は、何と言ってもチェーンソーを用いた大胆な木彫技術にあります。単なる木材の加工にとどまらず、チェーンソーの持つ力強さと繊細さを巧みに操り、木材の持つ有機的な質感を際立たせる表現を追求しています。彼の作品からは、まるで生命が宿っているかのような躍動感と、静謐な美しさが同時に感じられます。

彼の創作活動は、1975年に愛知県立芸術大学大学院彫刻専攻を修了したのち本格化しました。1974年の初個展以降、精力的に作品を発表し続け、数々のシリーズを展開。代表的なシリーズとして「森」「《境界》から」「ミニマルバロック」などがあり、それぞれ独自のテーマと表現方法で展開されています。

初期の「森」シリーズでは、複雑に入り組んだ森の様相を木材で表現。チェーンソーの痕跡をそのまま残した荒々しい質感と、緻密な構成が見事に調和しています。続く「《境界》から」シリーズでは、「境界」という概念を彫刻のテーマに据え、空間と彫刻、内部と外部、光と影といった、様々な境界線を曖昧にする表現に挑戦しています。そして、2000年頃から取り組む「ミニマルバロック」シリーズでは、ミニマルアートの簡潔さとバロック美術の装飾性を融合した、独特の彫刻世界を創造しました。

戸谷成雄の作品は、単なるオブジェとして鑑賞するだけでなく、観る者の意識や感覚を揺さぶる力を持っています。彼の作品は、ポストミニマリズムやもの派といった、戦後の日本の美術運動の影響を受けていますが、それらに留まらず、独自の視点から「彫刻」という概念を再構築、新たな可能性を探求し続けています。彼の彫刻は、「表面」「境界」「関係」「影」「存在」といった、彫刻の本質に関わる問題を鋭く切り込み、観る者に深い思考を促します。

数々の個展は、東京、名古屋、福岡、そして海外へと広がり、その作品は高い評価を得ています。また、多くの美術館や公共施設に作品が収蔵されており、その存在感は年々増しています。朝倉文夫賞、平櫛田中賞、中原悌二郎賞など、権威ある賞の数々の受賞歴も、彼の芸術的功績を物語っています。2009年には紫綬褒章を受章、その芸術への貢献は広く認められています。

戸谷成雄の彫刻作品は、一見するとシンプルでありながら、その奥深さ、そして力強さは多くの人の心を捉えて離しません。木という素材と、チェーンソーという道具、そしてアーティストの深い洞察が一体となって生まれた、まさに木と空間の詩と言えるでしょう。彼の作品は、これからも多くの人々に感動と刺激を与え続けることでしょう。

主な展覧会（抜粋）

彼の作品は、国内外の多くの美術館やギャラリーで個展、グループ展を通じて発表され続けてきました。その一部を抜粋して紹介します。（本文のリストは省略）

パブリックコレクション（抜粋）

戸谷成雄の作品は、数多くの美術館や公共施設に収蔵されています。その一部を以下に示します。（本文のリストは省略）

受賞歴

・1988年 朝倉文夫賞
・1995年 平櫛田中賞
・2004年 芸術選奨文部科学大臣賞
・2009年 紫綬褒章
・2015年 第39回中原悌二郎賞

参考文献

・『戸谷成雄―さまよう森 TOYA SHIGEO "Wandering Woods"』国際芸術センター青森 編
・『戸谷成雄―現れる彫刻 Shigeo TOYA—Sculpture to Emerge』北澤智豊 編

外部リンク

・シュウゴアーツ - 戸谷成雄

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