平櫛田中

平櫛田中について

平櫛田中（ひらくし でんちゅう）は1872年に岡山県に生まれ、1979年に107歳で亡くなった日本の彫刻家です。本名は平櫛倬太郎で、旧姓は田中です。田中は、写実的な作風で知られ、高村光雲や荻原碌山、朝倉文夫と並ぶ近代日本の代表的な彫刻家の一人とされています。生まれ育った地では名誉市民に選ばれるなど、彼の功績は多大です。

経歴と業績

田中は、岡山県後月郡に生を受けた後、1882年に広島県の平櫛家に養子に入りました。1893年には大阪の人形師、中谷省古に弟子入りし、木彫りの技術を磨きます。彼は1935年に帝国美術院の会員に選出されますが、翌年の改革案に反発し辞任。その後、1944年に帝室技芸員、さらに東京美術学校の教授に就任し、戦後も教育に貢献しました。

1950年には自作を含む彫刻コレクションを東京藝大に寄贈し、作品の保存と教育の重要性を訴えました。明治末期には、岡倉天心に師事し、彼を敬愛していた田中は、東京藝大の六角堂に「岡倉天心像」を安置しました。この像に毎朝最敬礼していたというエピソードが彼の敬意を表しています。

特に有名な作品である『鏡獅子』は、戦中のブランクを経て20年かけて完成しました。この作品への情熱は、歌舞伎座に通い詰めて観察を行ったことに反映されています。田中はまた、1962年には文化勲章を受章し、1965年には東京藝大名誉教授となりました。

作品と影響

田中には数多くの代表作があり、国立劇場のロビーにある『鏡獅子』や小平市の『転生』、またブロンズ像の『五浦釣人』などが名高いです。五浦釣人は、茨城県北茨城市の五浦海岸をイメージして制作されたもので、音読では「ごほちょうじん」と呼ばれています。他にも、多摩霊園にある彼の墓は、多くの訪問者を惹きつけています。

田中の作品のみならず、彼の名言も多くの人々に影響を与え、「田中語録」として知られています。彫刻道具へのこだわりもあり、自ら製作した彫刻刀や鑿を使うことから、その技術への情熱が伺えます。

長寿と影響

田中は107歳で亡くなるまで創作を続け、彼のアトリエには多くの彫刻用の材木があり、制作の意志を持ち続けていました。彼の長寿は、日本の高齢社会における希望の象徴とされています。彼の影響力は、死後も作品や自身の哲学を通じて多くの人々に受け継がれています。

最後に、平櫛田中の業績は、日本彫刻界における重要な一頁を刻んでおり、彼の作品や教えは今なお色あせることなく輝きを放っています。

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