手を用いた遊び

現代の日本において、主に指や手のみを用いて行われる様々な遊びが存在します。これらの遊びは、特定の統一された名称を持たないものが多く、地域や学校、あるいは遊ぶグループによってルールが異なるのが大きな特徴です。伝統的な名前が付けられている拳遊びや、あやとり、折り紙のように手以外の道具を使う遊びとは区別され、英語では「Hand game」と呼ばれるカテゴリに相当します。

概説

これらの手を用いた遊びは、主に小中学生や高校生の間で広く親しまれています。道具を一切必要とせず、体の一部である手や指だけで遊べるため、教室の休み時間や、時には授業中にこっそりと楽しむなど、場所を選ばず手軽に行えます。初対面の人と遊ぶ際には、お互いの知っているルールが違う可能性があるため、事前に確認することが大切です。

これらの遊びには、それぞれの内容を指し示す定まった名称が存在しないため、実際に遊ぶ際は相手に手の形や具体的なアクションを見せながら「これ、やろうよ」と誘うのが一般的です。日本全国で似たような遊びが見られますが、2008年頃の調査では10代の認知度が高い一方で、30代や40代には馴染みがない人も少なくなかったことから、比較的新しい時代に広まった遊びであると考えられています。発祥の経緯は不明なものが多く、ルールの統一もされていないため、遊ぶ人や場所によって「これが正式なルールだ」という認識が異なり得ます。

伝播

手を用いた遊びは、一度特定の学校やクラスで誕生し流行すると、非常に早いスピードで広まっていきます。ルールが直観的に理解しやすく、言葉での説明が難しくても実際にやってみればすぐに覚えられるような遊びは特に広まりやすい傾向にあります。創作された遊びは、部活動やクラブ活動、委員会活動などで他のクラスや学年の生徒に伝わり、1週間ほどで学校全体に広まることもあります。さらに、地域のスポーツクラブや学習塾などを通じて近隣の学校へ、そして長期休暇中の帰省や親戚訪問、部活動の遠征などを通じて遠方の地域へと伝播していきます。現代の情報化社会において、インターネットなども伝播を加速させる要因となっていると考えられます。

遊び方が名前よりも先に伝わることが多いため、たとえ考案時に名前がついていたとしても、ルールと一緒に定着することは難しいようです。子供たちにとって最も重要なのは、その遊び自体が持つ楽しさだからです。また、伝播の過程で基本ルールしか伝わらなかったり、新たな派生ルールが生まれたりするなど、ルールの変化や多様化も起こりやすい特性を持っています。このようにして、発祥からわずか数年で全国に広まり、多くのバリエーションが生まれていったと考えられます。

主な遊びの種類

手を用いた遊びには様々なものがありますが、ここではいくつか代表的なものをご紹介します。

数字を増やす遊び

別称として「戦争」「割り箸」「指殺し」などとも呼ばれます。2人以上で遊び、お互いの手の指の数を足し合わせていくゲームです。最初は人差し指1本（「1」の状態）から始め、相手の手を選んで自分の手の指の数を足したり、「分身」として自分の指の合計数を両手に振り分けたりしながら指の数を増やしていきます。指の数が一定以上になると消滅したり、特定の数になると勝ちになったりなど、様々なローカルルールが存在します。指が見えれば距離が離れていても遊べるのが特徴です。

ごかくし

「エチケット」「指富豪」とも呼ばれる、主に2人で遊ぶ頭脳戦の色が濃いゲームです。片手、または両手（「スーパーエチケット」と呼ばれる場合も）を使い、隠した指に対応する数字（1から5、あるいは1から10）をコールして消していきます。一度コールして消した数字は二度と言えません。自分の番では、前回相手がコールした数字より大きい数字をコールする必要があります。コールできる数字がない場合や言いたくない場合は「パス」できます。先に全ての数字を消したプレイヤーの勝利となります。

数字を指定、予想する遊び

「いっせーのーで」「指スマ」など、非常に多くの別称を持つ遊びです。2人以上で円になり、掛け声と同時に親指（地域によっては他の指も）を立てます。掛け声の後、参加者全員が立てた指の合計数を予想してコールします。予想した数と実際の合計数が一致したプレイヤーは、片方の手を下ろすことができます。先に両手を下ろせたプレイヤーからゲームから上がり、最後まで残ったプレイヤーが敗者となります。掛け声の種類は多岐にわたり、「ゴールド」「ガム」「セメント」といった特殊効果を持つ掛け声が存在する場合もあります。

手を2回叩いた後攻撃などのアクションをする遊び

「e.f」「寿司じゃんけん」「千溜め」などと呼ばれるゲームです。2人以上で遊び、両手を2回叩いた後に「溜め」「攻撃」「防御」といったアクションを同時に出します。プレイヤーには「パワー」というパラメータがあり、溜めたり消費したりしながらゲームを進めます。攻撃が防御されなかったり、特定の状況でじゃんけんに負けたりすると敗北となります。「入れ替え」「自殺」「封印」「ミラー」「かめはめ波」など、多様な特殊アクションが存在し、それぞれにパワー消費や効果が設定されています。コミュニティによって様々な派生ルールが見られます。

相手の指を崩す遊び

子供たちの遊びとしての「指剣道」や「寿司じゃんけん」と呼ばれます。2人で行い、両手の指を組んでお互いに合わせ、自分の組んだ指で相手の指を攻撃し、指の組みを解かせていきます。一般的には小指から始め、崩れたら薬指、中指…と進み、先に相手の親指を崩したプレイヤーの勝利となります。人差し指から始めるなど、別のルールも存在します。指同士を強く打ち付けるため、怪我をしないよう注意が必要です。

手を重ねて行き上の手を叩く遊び

2人以上で遊びます。机や床に順番に片手を重ねていき、一番下に手を置いたプレイヤーが素早く自分の手を引き抜き、積み重なった一番上の相手の手を叩くゲームです。引き抜く際にフェイントをかけたり、上のプレイヤーが手を圧迫したりする駆け引きがあります。うまく相手の手を叩くことができれば勝ち、フェイントに相手が引っかかっても勝ち、叩けなかったり避けられたりすると負けとなります。

相手の手を叩く遊び

主に男子の間で遊ばれる2人用のゲームです。お互いに合掌の形からスタートし、攻撃側が相手の手の甲を叩くかフェイントを行います。防御側はこれを回避できます。叩かれた際に痛みに声を上げてしまうと負けとなり、自分からギブアップ（投了）することも可能です。回数制限を設けるルールや、「トウガラシ」というじゃんけんを取り入れた派生ルールも存在します。強く叩くと怪我をする可能性があるため、注意が必要な遊びです。

じゃんけんであいこだと言葉を先に言う遊び

「カレーライス」「グリンピース」「エレベーター」など、様々な別称で呼ばれるじゃんけんの派生遊びです。じゃんけんをしながら、出した手に対応した特定の掛け声を言います。勝敗に関わらずじゃんけんは続きますが、あいこになった場合に、定められた言葉（「水」「ドン」「ピンポーン」など）を相手より早く言えたプレイヤーが次の主導権を得たり、勝利となったりします。掛け声のリズムに乗せられないようにするのがポイントです。

これらの手を用いた遊びは、特別な道具が不要で、いつでもどこでも気軽に始められる点から、子供たちのコミュニケーションツールとして、また自生的な文化として多様な形で受け継がれています。

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