手向廃寺

手向廃寺（とうげはいじ）

手向廃寺は、岐阜県恵那市山岡町上手向に位置する、奈良時代の寺院跡です。山岡廃寺、長楽廃寺とも呼ばれています。宗派や本尊などは不明で、多くの謎に包まれています。

発見と調査

この地は古くから畑として利用されており、その際に布目瓦の破片が多数発見されていました。しかし、当時は古代史への関心が薄く、発見された瓦は耕作の邪魔になるとして川に捨てられてしまうこともありました。1965年（昭和40年）に道路拡張工事の際に布目瓦が発見されたことをきっかけに、発掘調査が開始され、古代寺院の存在が明らかになりました。

創建時期と勢力

出土した遺物から、この寺院は8世紀前半に創建されたと推定されています。手向廃寺は、遠山荘の手向郷（淡気郷）の中心であった古市場の台地上に位置しており、その寺院形式が恵那市正家にある正家廃寺とは異なることから、この寺院を建立した勢力は、正家廃寺を建てた勢力と恵那郡を二分していたと考えられています。しかし、廃絶時期については不明です。

文化財指定と現状

1977年（昭和52年）に恵那市の文化財に指定されました。1986年（昭和61年）には追加の発掘調査が行われましたが、2023年現在、寺院跡は主に畑として利用されています。

出土遺物と伽藍配置

出土した遺物は、布目の平瓦や筒瓦が主で、軒丸瓦なども見つかっています。しかし、完全な形の軒丸瓦は発見されておらず、その時代や様式を特定することは難しい状況です。礎石もわずかしか見つかっておらず、基壇や掘立柱建物状の遺構、溝などが確認されています。しかし、遺跡全体の発掘調査は完了しておらず、伽藍配置は未だに不明な点が多いです。

まとめ

手向廃寺は、古代の恵那地方の勢力図を考察する上で重要な遺跡です。今後の発掘調査によって、更なる詳細が解明されることが期待されます。

参考文献

『山岡町史　通史編』第三編　古代　第二章　大化の改新と地方の政治　第四節　山岡手向廃寺　p91～p97　山岡町史編纂委員会　昭和59年
『恵那市史　通史編　第1巻』第七章 古代恵奈郡の二つの寺院　第五節　手向廃寺　p703～p705　恵那市史編纂委員会　1972年
『恵那市史　通史編　第1巻』第七章 古代恵奈郡の二つの寺院　第六節　手向廃寺出土の瓦と創建年代　p703～p710　恵那市史編纂委員会　1972年
『恵那市史　通史編　第1巻』第七章 古代恵奈郡の二つの寺院　第七節　二つの寺院跡と古代の恵奈郡　p711～p714　恵那市史編纂委員会　1972年

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