手島精一

手島精一：日本の工業教育の礎を築いた教育者

手島精一（てじま せいいち）は、1850年1月11日に生まれ、1918年1月23日に没した、明治時代の日本の教育者であり、文部官僚です。彼は、東京教育博物館（現在の国立科学博物館の前身）や東京図書館（現在の国立国会図書館の前身の一つ）の主幹を務めたほか、共立女子職業学校（現在の共立女子中学校・高等学校の前身）や東京職工学校、東京工業学校、東京高等工業学校（いずれも東京工業大学の前身）の校長を歴任しました。

生い立ちと海外留学

手島精一は、沼津藩（現在の静岡県）の藩士・田辺四友の次男として江戸の藩邸で生まれました。12歳で同じ藩士の手島惟敏の養子となり、藩校明親館で洋学を学びました。1870年には藩から学費を借りてアメリカに留学し、建築学と物理学を学ぶ予定でしたが、廃藩置県により送金が途絶えてしまいます。その後、岩倉遣外使節団の通訳としてアメリカに同行し、さらにイギリスにも随行しました。1874年末に帰国し、翌年、東京開成学校（現在の東京大学の前身）の監事に就任しました。

工業教育への貢献

手島精一は、フィラデルフィアとパリの万国博覧会を視察した際、工業教育の重要性を痛感しました。帰国後、九鬼隆一や浜尾新らと共に、1881年に東京職工学校（現在の東京工業大学）を設立しました。彼は、民衆の啓蒙教育にも力を入れ、1876年に発表した「実業教育論」は、井上毅が文部大臣を務めていた時期の実業教育法制に理論的根拠を与えました。

東京職工学校は、1890年に東京工業学校、1901年に東京高等工業学校と改称され、手島は同校の校長として、日本の工業教育の発展に大きく貢献しました。彼は、1916年に校長を退任するまで、その職を務め、退任と同時に東京高等工業学校の名誉教授の称号を授与されました。

その他の活動

手島精一は、教育者としての活動の傍ら、1908年には早稲田大学理工科の商議員となり、阪田貞一や牧野啓吾と共に理工科の創設にも尽力しました。また、1897年には文部省の普通学務局長、1898年には実業学務局長を務めるなど、行政官としても活躍しました。

手島工業教育資金団

1916年には、政界、財界、教育界の著名な人物が発起人となり、「財団法人手島工業教育資金団」が設立されました。この団体は、90年以上にわたり、学生への奨学金や若手研究者への研究助成を行い、手島の遺志を継いで、日本の工業教育の発展を支援しました。

栄典と著作

手島精一は、その功績により、数々の位階や勲章を授与されました。1881年には正七位に叙せられ、その後、正三位まで昇叙しました。また、勲章としては、大日本帝国憲法発布記念章、藍綬褒章、勲六等瑞宝章から勲一等瑞宝章までを受章しました。さらに、中華民国から二等嘉禾章を授与されるなど、国内外で高い評価を受けました。

著書には、『青年自助論』などがあり、その教育思想は後世に大きな影響を与えました。

手島精一の遺産

手島精一は、日本の工業教育の基礎を築き、多くの人材を育成しました。彼の功績は、現代の日本の教育と産業の発展に不可欠なものであり、その名は今もなお、日本の教育史に輝いています。

関連情報

東京工業大学
手島精一記念研究賞
* 国立国会図書館 - 近代日本人の肖像 手島精一

手島精一は、教育者として、また行政官として、日本の発展に大きく貢献した偉人であり、彼の足跡は、今後も語り継がれていくでしょう。

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